『厳しい』越えた現実 有効求人倍率 東京の8分の1 青森・五所川原
景気回復が進む地域と、取り残された地域の「格差」が広がり、参院選でも各党が対策を訴えている。有効求人倍率(メモ参照)が、東京都の八分の一、名古屋市の十二分の一にとどまるのが、青森県五所川原市と周辺地域。現地を訪ね、広がる地域格差の実情と対策を探った。
JR五所川原駅から、人通りの乏しい商店街を歩いて十分ほど。「ハローワーク五所川原」には、多くの求職者が訪れていた。求人情報を調べる二十四台のパソコンには、人が鈴なり。二十-三十歳代に見える人も多かった。
月給12万円足らず
地元企業からの求人数は、求職者数の五分の一程度なので、地元で仕事を得るのは難しい。求職情報パソコンの利用者は一日に六百人に達するという。求人情報に提示される賃金水準は、驚くほど低い。縫製工、給料事務、美容師助手、タクシー運転手、施設警備員といった職種で月額十二万円未満の数字が並んでいる。二十万円以上は、薬剤師などほんのわずかしかない。パートの時給は六百円台や七百円台が中心。千円を超す求人は少ない。
都道府県別の五月の有効求人倍率(季節調整値)を見ると、青森県は〇・四九倍で、沖縄、高知に次いで三番目の低さ。正社員に絞った有効求人倍率(原数値)は青森県は〇・二三倍にとどまる。同県内でも特に低いのが五所川原地域(五所川原市、つがる市、北津軽郡、西津軽郡)で、〇・一八倍。一九九八年以降は〇・二倍前後で推移しており、経済の長期低迷ぶりが分かる。
同月の東京都の有効求人倍率は一・四〇倍(季節調整値)。全国トップの愛知県は、二・〇五倍(同)。その中でも特に高い名古屋市内は二・二四倍(原数値)に達する。名古屋市の求職者は、五所川原地域の人より十二倍就職しやすい計算だ。
青森労働局地方雇用計画官の古川実さんは「『厳しい』を通り越した水準」と話す。地域の主産業は農業と建設業。ともに全国的に不振な業種だ。五所川原市は、観光振興を絡めた街づくりなどで活路を見いだそうとしているが、決め手にはなりにくい。
製造業の大きな工場が五所川原地域に立地すれば、求人状況は大きく変わるが、「うちの地域はなかなか選んでもらえない」(五所川原市商工観光課)。近くに大きな港がないことや、冬の積雪量が多いことがマイナス材料だ。
地元に働き場が少ないので、県外に出て行く住民が多くなる。五所川原は昔から出稼ぎに出て行く人が多い。そうした労働力流出の構図は少しも変わっていない。ハローワーク五所川原の中畑誠所長は「この地域は今では、高卒の就職先も県内より県外の方が多い」と説明する。
自動車産業を中心に求人が多い愛知県は、五所川原の人たちにも働き場所として魅力だ。
ふるさとへの思い
名古屋市でタクシー運転手をしている久保田友博さん(58)は五所川原の北の北津軽郡小泊村(現在は中泊町)の漁師だった。十八年前に愛知県の工場に出稼ぎにきて、十五年前からタクシーに乗っている。青森県立の高校に通っていた二人の息子も高校を卒業して相次いで名古屋に来て、結局、一家で名古屋に引っ越した形になった。
「ふるさとへの思いは残しながら、生活の安定を優先させた」と話す。
久保田さんは村会議員を八年間務めたことがあり、政治への関心は深い。「五所川原のような地域は今のままでは、さらにひどいことになってしまう。国レベルで有効な対策を考える必要がある」と力説する。
地域格差の広がりは、都市部で暮らしていると実感しにくいが、日本の土台をむしばむ深刻な問題。参院選では各党の提言をよく見比べたい。