検索サービス、米に挑む日欧
グーグルに代表される米国中心のインターネット検索サービスの巨大化に、日本や欧州で警戒感が強まっている。情報技術の開発力や国の安全保障に影響する可能性があるためだ。日欧で巻き返しを図るプロジェクトが動き始めた。
●日本 買い物助言、「ネット外」に勝機
携帯電話の中の案内役が、通話履歴や全地球測位システム(GPS)による位置情報、電子マネーの利用データなどから、買い物の助言をしたり、運動不足を指摘して健康情報を検索したりする。
NTTドコモが提案する「マイ・ライフ・アシスト」サービスだ。経済産業省が主導する「情報大航海」プロジェクトで、4月に応募32件の中から選ばれた。
もう1件選ばれたのは日本航空の「新総合安全運航支援システム」。「飛行中に機体が大きく揺れた」「乗客がけがをした」といった日々の報告をデータベース化。小さなトラブル情報や気象などの情報も取り込んで検索できるようにし、危険の事前予測をめざす。鉄道の運行や発電所の運用などへの応用も検討する。
「情報大航海」に向けて昨年設立された組織には、電通やNTTなど産官学91団体が加わる。経産省は事業開発を3年間支援する。今年度の予算は約46億円だ。
パソコン本体やOS(基本ソフト)は米国に先行されたが、検索ではまだ日本の出番があると経産省の八尋俊英企画調査官。「米国が得意なのはネット内のいわば、内海の情報。日本が得意な薄型テレビなどのデジタル家電や携帯電話などが扱うネット外の実世界情報、外洋の情報も検索する新しい船出をしたい」
●欧州 商業ベースへの疑問を共有
「米大手企業による世界的挑戦を、受けて立たなくてはならない」
フランスのシラク大統領は、昨年1月の年頭演説で新検索エンジン「クエロ(QUAERO)」開発を国家事業として進める決意を示した。5年で2億5千万ユーロ(約400億円)の補助金支出を計画、欧州委員会の認可を待つ。現在、国内シェアの9割をグーグルが占める。
クエロは映像や音声などを含むマルチメディア検索が主体だ。参加するLTUテクノロジーズ社のチャハブ・ナスター社長は「盗まれた美術品などをネット上で捜す技術を開発してきた。画像検索では米に先行している」という。次世代検索をめざすエグザリード社のフランソワ・ブードンクル会長は「正確なキーワードがわからなくても正答を探し出せる技術を開発したい」と意気込む。
グーグル躍進への不安が欧州で広がったのは、同社が図書館所蔵本を検索できるサービスを始めた04年末ごろ。仏国立図書館長が「次世代世界の米国支配」と、危機感を表明。ルイ・ヴィトンなどが「自社のブランド名で検索した顧客を他社のサイトへ誘導する検索連動広告は、商標権の侵害だ」として相次いでグーグルを訴えた。
仏主導のクエロ以外にノルウェー主導の「ファロス」やドイツ主導の「テセウス」などの検索プロジェクトも動く。「今後はあらゆる場面で情報検索が必要になる。広告でもうける米国の商用サービスだけに頼っていていいのか」(ノルウェーのFAST社、ジョン・レービック最高責任者)との問題意識は共通だ。
●米国 「安全保障」軍予算で競争力
日欧政府担当者は「個々の優れた技術をまとめれば産業の活性化がはかれる」と口をそろえ、多額の国家予算を付けようとしている。それでもグーグルやマイクロソフトなど大手企業の研究費には遠く及ばず、「今後の情報技術開発は、ネットで詳細を公開して多くの利用者の工夫で開発するオープンソースや市場競争に任せるべきだ」との声もある。
一方、米国には日欧のような計画こそないが、検索技術が国家安全保障を左右するとの認識が根本にあり、「大学や民間研究所に潤沢につぎ込まれる軍関係の研究費が、一般企業の競争力につながっている」(米スタンフォード研究所アナリストの清貞智会(きよさだ・ともえ)さん)。
例えば、米国防総省国防高等研究計画局(DARPA)が進めるGALE計画だ。アラビア語や中国語の文書やメディア情報を解析し、「クウェートがテロ攻撃される可能性は」といった軍事関連の質問に答えを出そうとする。この技術は災害情報検索や伝染病予測、企業や個人の日常の情報検索にも転用が可能だ。