悲しいことです。
世のため、人のために医師を目指し、命を救うべき職種の医師になった若者が自らの命を絶たざるを得なかった本人の気持ちを思うと言葉もありません。
医師というのはとても特殊な仕事です。
ある程度の自己犠牲の気持ちがないと成り立たない職種だと思います。
でもそのボランティア精神に今まで依存し過ぎていたのではないでしょうか。
今から30年ほど前、私は兵庫県の北西端にある公立浜坂病院に小児科医として勤めていました。
病院に小児科医は私しかいません。
そして地域に夜間や休日の救急診療を行う病院はそこしかありません。
だから深夜に呼び出されることもありましたし、コールがなくてもいつも神経が張り詰めた状態でした。
でも病院に理解があって、月に1回だけですた土日に島根医大から小児科の先生を呼んでいただけました。
だからその週末は全く仕事のことを気にせずに過ごすことができました。
そんな時間を与えたもらえたことで、心身のバランスを崩さずに済んだんだと思います。
確かに私が研修医の時に県立西宮病院の救急センターで過ごした3か月は、1日も休みはありませんでした。
でもそれを今の若い先生に求めてはいけません。
あの頃と時代が違います。
医師に求められる業務内容のレベルが格段に上がっています。
その分医師にかかる負担は多大なものになっています。
これは勤務医だけでなく開業医でも同じだと思います。
よく「開業医は楽な仕事」と世間では言われているみたいです。
でも決してそんなことはありません。
開業医は開業医なりにたくさんの仕事を抱えています。
そして自分が倒れたら何の保障もありません。
結構シビアな状況で日々の診療を行っています。
そしてそれがために体調を崩しておられる先生も数多く知っています。
今回の過労死問題、この悲劇を繰り返さないようにするためにみんなで注目し、意識を変えていく必要があるかと思います。