この日は訪問の仕事で、その時は自転車を漕いでいた。いつものように、何か考え事をしながら慣れた道を通っていた気がする。
ふいに、今まで自分が執着していたモノが、ごそっと身体から出ていくのを感じた。「ゴホッ!」という肺からの大きな咳が、複数回出たように思う。
執着していたモノの詳細は省くが、生きがいとまでは言わないものの人生における「楽しみ」の一つだった。それが、一気に抜けていってしまったのである。
一瞬、フラッとなった気がした。息が止まるような感覚があり、死ぬんじゃないかとすら思った。ただ、実際にはいつも通りに自転車を漕いでいただけであった。そして気づいた「ああ、別になくても生きていけるじゃないか」と。
一度経験すればしめたもので、後は意図的に自分の中にある執着を、イメージの中で次々と引っぺがした。深く染み込んでいるものをはがす時は、イメージの中なのに身体の痛みを伴うという不思議。その時も「ゴホッ!」と大きな咳が出た。
完璧に、100%取り除くことができれば、「無」へ至るのだろうか?