ホミン パラレル
つまり、チャンミンが秘書兼通訳として同行するアクション監督が担当する映画の、主演俳優という事になる。
ようやく涙が治まった後、チャンミンは彼のプロフィールが書かれた資料を手に取り、ページを捲った。
チョン・ユンホ29歳。
大学生の頃にアルバイトをしていたカフェでスカウトをされ、モデルの仕事を始める。
その後、俳優に転向。最初の2年間は売れずに苦労したと書かれている。
転機が訪れたのは、脇役で出演したアクションドラマ。
幼少期から格闘技を習っていた事、
またモデル出身のスタイルの良さから、その身のこなしの美しさが評判になる。
次に出演したラブコメディドラマで主人公の親友を演じ、そのコミカルな演技が評価された。
初主演した映画も同様のヒットを飛ばし、現在国内で注目を浴びている俳優の一人である。
また、デビュー時点で兵役を終えている事も、同年代の俳優の中で、彼へのオファーが集まっている要因の一つだ。
偶然か…それとも必然か…
チャンミンは「はぁ…」と溜め息を吐く。
今更受けた仕事を断る事は出来ない。
しかも理由が、夢に出て来る相手と主演俳優がそっくりで怖いから…なんて言えるはずもない。
「だから韓国には行きたくなかったんだ…」
夢に出て来た人物達の服装から、夢の舞台が昔の韓国なのは分かっていた。
だから、自分のルーツなのに、この年齢まで一度も行かずに過ごして来たのだ。
両親はチャンミンの意思を尊重して、無理矢理チャンミンを韓国に連れて行くようなことはしなかった。
もし今回、この仕事のオファーが無ければ今後もチャンミンが韓国の地を踏むことは無かっただろう。
それだけに、今回の出来事が単なる偶然とは思えなかった。
「怖い…」
チャンミンは呟き、ギュッと拳を握り締める。
目の前のモニターの中では、彼が暢気に夢の中と同じ顔で、恋人を演じる女優に笑顔を向けていた。
