ホミン パラレル
帰宅をし、資料として渡されたBlu-rayディスクをセットする。
1本目は通訳兼マネージャーとして暫く一緒に過ごすことになるアレックス・黄がアクション監督を務めた映画だ。
彼は香港出身で、まるで舞っているかのように、優雅で美しい殺陣が特徴的な監督だ。
ハリウッドでも成功しており、今や引く手数多と聞いている。
そんな人物に仕事で関われるのはとても光栄な事だ。
韓国滞在中、監督が仕事に集中出来るように、嗜好については、細かい資料を事務所からメールで送ってもらった。
映像を流し見ながら資料を眺める。
そこまで神経質な人物では無さそうで少しホッとした。
元々チャンミン自身内向的で、環境の変化に慣れるまでに時間が掛かる。
それに加えて、慣れない土地で、神経質な相手の面倒を見るのは骨が折れる。
それを避けられた事はありがたい。
韓国の芸能界に興味は無く、全く知識が無かったので、参加する映画の監督、主演俳優と女優の資料も併せて貰って来た。
秘書業務をしていた時に身に付けた事だが、仕事で接する相手のプロフィールや嗜好などは把握をしておくに限る。
どこから会話が広がるか分からないし、何かトラブルがあった際もその方が対応しやすい。
事前に貰う事の出来た脚本にざっくり目を通し、撮影スケジュールを確認する頃、画面にはエンドロールが流れていた。
だいぶ遅い時間にはなっていたが、続いて主演俳優の資料映像の入ったBlu-rayディスクをセットする。
彼が初主演を務めたラブコメディで、韓国では中々評判が良かったと聞いた。
普段はあまりラブコメディは観ないが、これも仕事。
評判が良かったのなら、流石に退屈はしないだろうと画面に目を向ける。
そんなに真剣に見る事も無いだろうと、手元の資料でプロフィールを確認しようと思った所で、
画面に映し出された男性の顔に、チャンミンは釘付けになった。
ドクン
心臓が大きな音を立てる。
「えっ…」
何だこれ…
その男性の顔を見た瞬間、目頭が熱くなり、堪える事が出来ないまま、チャンミンは涙を溢れさせていた。
こんな経験は初めてで、画面から目を離す事が出来ない。
「どうして…」
幼い頃から繰り返し見る夢の中の人物と、画面の中のその男は同じ顔をしていた。
違うのは、夢の中の人物は時代劇に出て来るような服装をしていたこと。
そして、年齢も夢の中の人物の方が若く見えること。
ギュッと心臓が掴まれたように苦しくなり、チャンミンはシャツの胸元を掴み堪える。
訳が分からないまま、夢を見た後と同じように、相手への愛しさと悲しみに心が支配される。
