パラレル ホミン







「今終わりました」



報告の電話を入れてから、事務所へと向かう。



仕事を終えた後の気怠さと、これからあの人に会える期待感に満ちて行く。



1週間ぶりだ。




僕は大学に通いながら、娼 夫の仕事をしていた。

きっかけは年上の恋人に連れて行かれたホテルにあるバーのトイレで、あの人に出逢ったから。



勉強も運動も得意で、顔もそこそこ。
昔から何も意識しなくても女性にモテた。


退屈な毎日に退屈なセッ ク ス。


そんな色の無い日常が、あの人に出逢ってから、

この仕事を始めて様々な女性に出逢ってから、色鮮やかになり、意味あるものへと変わった。



駅に向かって歩いていると電話が鳴る。


『久し振りに食事をしよう』


問われて、今居る場所を伝えた。




「チャンミンはお客様からの評判がとても良いよ」


いつも行く店を聞かれて、友人達と行く居酒屋を挙げた。



正直あなたはこんな店に似合わないと思う。

でも、久し振りに来たと楽しそうに笑う。



「人生は楽しい物になったかい?」



聞かれて頷く。


「女性が魅力的に見える様になっただろう?」


その言葉にも頷いた。


「僕は子供でした」


ジョッキを持ち上げ、ビールを一口飲む。


「型に嵌めて女性達を見てました。

   みんな同じだと思っていたから、ただ、同じ様に型に嵌まったセッ ク ス をしてた。

  それで分かったつもりになって、どこか女性を下に見てました。恥ずかしいです」


「自分の拙さを認められる人間は成長する」


焼酎の入ったグラスをゆっくりと彼が口元に運ぶ。


爪先まで整えられた美しい指が、場にそぐわない位優雅に杯を傾けた。


ゴクリと滑らかな喉が、硝子の中身を飲み干す。


「一番恥ずかしいのは、それに気付かない人間だよ」


「なら、あなたに出逢った頃の僕は、恥ずかしい人間だったって事ですね」


「そうだな。でも、興味をそそられる魅力はあったよ」



彼がくすりと笑う。



「トイレで勧誘する位」


「『つまらなそうだな、退屈なセッ ク ス だけして一生終えるのか?』 でしたっけ、あなたの最初の言葉」


「俺に着いて来れば、官能的で刺激的な毎日を送れるようになる。
  実際その通りになっただろう?」


「はい…とても官能的で、刺激的です。切なくなるくらいに」


「誘った甲斐があったな」



スーツの懐から煙草を取り出し、カチリとシルバーのライターで火を点けるとふぅっと彼が息を吐く。

たかが煙なのにそれすら酷く甘く感じる。


「それで、チャンミンがそんなに女性達の心を掴んでいる秘訣は何だい?興味があるな」


「簡単な話です。あの日、あなたに抱かれた時の事を思い返しているだけです。
  だから僕には女性の欲望が分かるのかもしれません。
そして、どんな欲望でも蔑む気持ちにならない。とても美しく見える」


「なるほど。多くの物を学んだみたいだね」


「えぇ…感謝してます」


「こちらこそ。君のお蔭で売り上げは上々だよ」


「なら…もっと僕が稼げる様になったら、ご褒美を貰っても良いですか?」


「良いだろう。何が良い?」


「あなたを…ください」


見詰めると余裕のある微笑みを彼が浮かべる。


「良いよ。俺が抱きたいと思うくらい、欲望に塗れておいで」


「えぇ、怖いぐらい美しい欲望を纏った僕で、あなたに抱かれます」


「楽しみだな」


あなたが子供の様に無邪気な顔で笑った。




良かった。


僕はあなたに喜んでもらう為に、この仕事をしているのだから。



Fin



映画の娼 年 を観て書いたお話です。

あの映画女優さんたちがみんな綺麗で、観ていて楽しかったです。




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