昔はよく、ユノの集まりに呼ばれた。
兵役中もそう。
必ずユノは自分の仲間を紹介してくれる。
でも、ここ最近はそれもあまりなくなった。
インスタで知ることも多い。
「ねぇ、ヒョン。特別って何なんでしょーね」
近くに立って二人のやり取りを見ていたマネージャーに言うと、「言葉のままだろ」と返って来た。
停めていた足を動かし、楽屋へと向かう。
「実際友達とは違うだろ」
事情を知ってる彼はそう言う。
「そう、ですね。違いますよね」
俺の声のトーンが気になったのか長い付き合いのマネージャーが眉間に皺を寄せる。
「おい、何が引っ掛かってるんだ?普通喜ぶ所だろ?」
「ははっ、そうですね、普通は喜ぶとこですよね」
「…チャンミナ、お前、何か悩んでる事あるならユノに言えよ」
「話す機会が出来たら話します」
そう言うとマネージャーが怪訝な表情を浮かべる。
「おい、そんなの機会なんて作れば良いだろ?話があるとか言えば良い」
「忙しい人なので」
楽屋に着いて中に入ると、他に人が居ないのを良いことにマネージャーが少し声を大きくする。
「忙しくてもお前が言えばユノは時間ぐらい作るだろ」
「そうですね」
ぼそりと答えた俺を見て何かを察したんだろう。
「おい、お前ら二人で会ったの何時だ?」
「ほぼ毎日会ってますよ、ヒョンも知ってるでしょ?」
「仕事じゃなくて、プライベートでは?」
「二週間位前かな」
「は?」
マネージャーの驚く顔を見て、だよねと内心溜息を吐く。
いくらピンの仕事が多いとは言っても、
ダンスの練習やアルバムや他の仕事の打ち合わせもある。
仕事で顔を合せるのはほぼ毎日。
ただし、そこには事情を知らないスタッフもたくさん居て、
あくまで俺達はメンバー、兄と弟、という立場は崩さない。
つまり、あまりプライベートな会話はしない。
それに、仕事の時にはお互いスタッフとの会話を多くするようにしてる。
だから、この二週間恋人としての会話はほぼ皆無だ。
「仕事が早く終わる日もあっただろ?」
マネージャーに問われて、俺は自虐的に笑った。
「俺と違って、あの人、人気者だから」
人誑しのユノには常時多量なメールや電話が入る。
仕事が終わった後に、誘いに乗って出掛ける事も良くある事だ。
「電話は?」
首を横に振る。
仲間と集まってる時に電話は来ないし、こっちも掛けない。
毎日1回、必ずカトクは来るけど、深い話をする感じにはならない。
兵役中は良かったなぁ。
何か月も会えないし、連絡も頻繁には取れなくて、
会いたい、声が聴きたいという想いがどんどん蓄積した。
お互い同じ様な環境に居たから、
いつもは遠慮して出来ない連絡も出来たし、
次の休暇に会いたいと素直な気持ちを伝える事も出来た。
そしていつも嬉しそうにユノは願いを叶えてくれた。
でもこの世界に戻って暫くしたら、また同じ。
共演した人達との縁も繋がり、ユノには前以上に人から声が掛かる。
人との縁を大切にしてるのは良く知ってる。
人から慕われる事を喜んでるのも。
そんなユノに、会いたい、寂しいなんて、話があるなんて言えない。
だって…少なくとも毎日の様に会っては居るんだ。
だからきっと、彼は二週間恋人としての時間を過ごしてない事も気付いていないと思う。
黙ってしまった俺の頭を、マネージャーヒョンがポンと叩く。
「なぁ、チャンミナ。お前は頭が良い分物分りも良いけど、
もっと我儘を言っても良いと俺は思うぞ」
心配してくれているのに、俺は「そうですね」と無難な返事しか出来なかった。
続く
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