文章を書く上で、「意見」と「感想」の区別はしっかりとつける必要があります。
とくにビジネス文書では「意見」を書くことはあっても「感想」を書くことはまずないと考えていいでしょう。
そもそも、意見と感想はどのように違うのでしょうか。
「意見」とは、自分の考えや主張のことを指します。
これに対して「感想」とは、感じたことを指します。
意見を書いたつもりだったのに、読み手の側からすると「これは筆者の感想に過ぎないのでは?」と受け取られる場合があります。
たとえば、次の例を見てください。
「MacbookシリーズがM1チップに移行することによって、今後はiOSとの垣根がより低くなっていくと予想される。
アプリ開発においても、PCとスマホ・タブレットを線引きする発想をアップデートしていく必要があるだろう。」
伝えようとしていることは理解できるのですが、「発想をアップデートしていく必要があるだろう」と言われても「それで、具体的にどうすればいいの?」と感じる人は多いのではないでしょうか。
このような文章は、しばしば「筆者の感想に過ぎない」と捉えられる傾向があるので注意が必要です。
なぜ「意見」を述べているつもりでも、読み手には「感想」と受け取られてしまうのでしょうか?
最大の原因は、読者に対する「提案」になっていないことにあります。
先の例では「発想をアップデートしていく」と述べています。
より具体的に言えば、「今後は対象とするデバイスを限定することなく、汎用性の高いアプリを開発するべきだ」となるはずです。
書き手としては「発想をアップデートしていく必要がある」と書けば伝わる、と思っていても、読み手としてはより具体性のある提案のレベルまで書いてもらいたい、と感じてしまうわけです。
意見と感想の最大の違いは「提案」になっているかどうか、に尽きます。
「提案」として受け止めてもらえるだろう、と読者に判断を委ねてしまうのではなく、その文章を通して「結局のところ、何を提案したいのか?」まで書かなければ「意見」とは言えないのです。
このことは、文章を書くときだけでなく口頭での打ち合わせや会議、商談にも当てはまります。
せっかく有益な情報を提供しても、相手は「へえ、そう考えているのですね」と受け取るだけでしょう。
「だからこうして欲しいのです」という提案まで持っていくことで、はじめて「この人は意見を述べているのだな」と受け止めてもらうことができます。
ビジネスにおいて、感想ではなく意見を述べることは基本的かつ重要なことです。
文章を書くときはもちろんのこと、会話や発言においても「提案」として受け止めてもらえる内容になっているか、セルフチェックしておくと相手に伝わりやすくなるはずです。