朗読『ねことおしるこ』① 小川未明(青空文庫より) | 佐々木愛の『愛ときーちゃんの部屋』

朗読『ねことおしるこ』① 小川未明(青空文庫より)


『ねことおしるこ』小川未明。(青空文庫より)
「お姉ちゃん、お姉ちゃん、たいへん。」と、枕を並べている正ちゃんが夜中におねえさんを起こしました。よく眠入っていたお姉さんは、何事かと思って、おどろいて目を覚まして、
「どうしたの、正ちゃん」と、今にも立ち上がろうとなさいました。
「あれ、たいへんじゃないか。」と、正ちゃんは、大きな目を開けて、耳をすましていました。
「なにさ、何が大変なの。」
「アオン、アオンと言っているだろう。あれは黒いどら猫だよ。そして、ニャアニャアといっているのは、三毛なんだよ。」
正ちゃんは猫のけんかで目を覚ましたのでした。小さい三毛が、大きな


黒ねこにいじめられているので、大変だと思ったのです。
「ねこのけんかでしょう。そんなことで、人を起こすものがありますか、びっくりするじゃありませんか。」と、お姉さんは正ちゃんをしかりました。正ちゃんは、お床の中で、しばらく黒ねこと三毛ねこのけんかを聞いていましたが、我慢がしきれなくなって、
「しっ!」と、どなりました。
そのうちに、ねこの鳴き声がしなくなりました。
「悪いどらねこだな。今度見つけたら、石を投げてやるから。」
そう言って、正ちゃんは、眠りましたが、お姉さんは、なかなか眠れませんでした。明くる日の朝、みんなが、テーブルの前にすわった時、
「あんなことで、起こすものじゃなくてよ。」と、


正ちゃんは、お姉さんにしかられました。ところが、その日の午後でありました。お姉さんが、学校から帰ってくると、往来で遊んでいた正ちゃんが、遠くから、見つけてかけてきて、
「お姉さん!」と呼びました。これを見た、お姉さんは、思わずにっこりなさいました。