パートナーが、『コミュニケーションが成立しなさすぎる』『共感性が全く見られない』『言い訳が多くて謝らない』『同じ失敗を何度も繰り返す』『常識では考えられない行動をする』『お金に厳しすぎるか浪費しすぎる』…
こういった特徴が見られた場合、(もちろんただの性格の可能性もありますが)そこに発達障害が隠れている可能性があります。
パートナーがアスペルガーかもしれないと思ったら
大きく分けて、考えなければいけないことは2つあると思われます。
ひとつは、アスペルガーかもしれないパートナーをどうするか。
ふたつめは、アスペルガーであるパートナーに対して困っている(はず)の自分自身をどうするか。
この2点です。
パートナーがアスペルガーかもしれないと思っても、受診させて治療を受けるのは困難
これは私が複数の専門家(2名の精神科医、2名のカウンセラー)から言われたことでもあるのですが、アスペルガー自体を治療したり、改善させようとするのはかなり難しいということです。
そもそも、アスペルガーであるパートナー自身が、二次障害(例えばうつや、職場への不適合など)を抱えて困り感がある場合は、おそらくすでに治療や自分自身の状態を調べたりしているかもしれません。
しかし、現時点でそうではなく、アスペルガーであろうパートナーだけが伸び伸びと生活して、自分だけが相手の言動に苦しんでいるような状態の場合は、『あなたはアスペルガーかもしれないので、受診して調べて欲しい』と言っても相手方は(特にアスペルガーなら)まず受け入れないでしょう。
なぜかというと、アスペルガーの特徴として
・相手が自分のせいで困っているということが理解できない
・アスペルガーは損得勘定で物事を考えるので、受診しても自分の得になることがないので動かない
などがあり、そのため受診の要求は受け入れ困難です。
次に、専門家の皆さんが口を揃えて言うのは『困り感のないアスペルガーは治療不可能』とうことです。
100歩譲って、知能検査などを受けてもらうことが出来て診断がついたとしても、アスペルガーの根本的な問題は脳の機能障害のため、薬などはありません。(二次障害のうつや睡眠障害などへの対処療法として薬が出ることはあります)
カウンセリングや、SST(ソーシャルスキルトレーニング)などで日々、自分自身の行いを振り返りながら言動を矯正していくやり方になります。
定型発達の人でも自分の言動を振り返って直していくのはなかなかストレスの多いことだと思いますが、それを習慣やこだわりの強いアスペルガーの当事者がやるというのはさらに難しいことです。
昨今の発達障害の治療において、『幼少期からの早期発見、早期介入』が叫ばれていますが、これは幼少期であればまだ、行動の修正がしやすいからです。
この介入の成果は、『患者が30歳を越えていると成果が出にくい』と言っている医師もいました。
さらに、この後で記載しますが、最終的に別れると選択する場合、パートナーに改善の努力してもらうことは大した意味がなくなります。
これらのことから、無理に受診させて改善を試みるというのは正直、茨の道と言って良いでしょう。
それでも関係を継続したい場合、こちら側だけが今後も我慢をし続けるのは精神衛生上良くないですよね。
どうしても受診して欲しい場合の切り札のようなものは最後の方で解説します。
↑アスペルガーの当事者が自分の家族への行動を直したいと思ったら読む本です。
↑広範性発達障害(ほとんどがアスペルガー、または愛着障害の事例)が犯罪に繋がった事例について調査しています。アスペルガーの歴史についてもわかりやすいです。
パートナーの受診よりも、まずは自分自身の回復と自立
ここまで、アスペルガーであると思われるパートナーに改善を求めるのは難しいと書きました。
それよりも先に取り組むべきは、カサンドラ症候群(アスペルガーのパートナーと付き合うことで精神的に疲弊している状態)になりかかっている自分自身を助けることです。
カサンドラ症候群になりかかっているとした場合、立ち直るための方策は一般的に次の2つと言われています。
1.自分の時間を過ごす。ひとりで出掛けるなど、パートナーのことを気にしないでいる時間をなるべく多く作る。趣味や仕事で忙しくするのも良し。
2.パートナーから離れる。離婚や別居も良し。離れたら暮らせない!と思うかもしれないが、意外となんとかなるのでとにかく一時的にでも離れる。
ここに、私独自の見解ですが、以下の2つも付け加えて合計4つの対策としたいと思います。
3.アスペルガーや発達障害について理解し、コミュニケーションの取り方を工夫する。(指示を具体的にする、共感を求めないなど。)もしくは『この人はアスペルガーだから無理なんだ』とまともなコミュニケーションを諦める。
4.アスペルガーを分かっている人と悩みを分かち合う。知人や友人では、事情を知らないので的外れな意見になりがちで、根本的に理解してもらえないため、相談しないこと。出来れば自助会やピアグループなどがあれば良いが、近くになければTwitterなどで良いので、発達障害を分かっている人たちとつながる。
これらの方策を使用して、何よりもまず自分を助けるということをやって下さい。
カサンドラ症候群からの回復についてはまた別の記事で詳しく記載したいと思います。
どうしても受診してアスペルガーを改善して欲しい場合!
非常に茨の道ですが、パートナーをどうしても受診させたい方には以下の方法がおすすめです。
1.受診費用を最初は払ってあげる
アスペルガー症候群は損得勘定が強いです。また、発達障害の受診は検査によっては保険外になるので、例えば知能検査のWAISなどを自費で受けるとクリニックによっては4-5万円と高額です。これらの高額な費用を払って、自分の悪いところに向き合うというのはアスペルガーには理解しづらいところがあるので、『受診費用は私が持つから、一緒に病院に来て』と無理やり連れて行きましょう。
ただ、その先のSSTやカウンセリングで、本人がもしも真面目に受診する気になった場合は、本人に払ってもらいましょう。自分のお金で受けた方が、損得勘定の強いアスペルガーには『ちゃんと元をとらないと』という意識が働きます。(真面目に受ける気が沸かなかったら、カウンセリングもSSTも意味がないので費用を肩代わりするのはすぐに止めた方がいいです。本人の自覚が沸く日を待ちましょう…)
2.別れを言い渡し、引き換えに改善を迫る
正直、これが一番効果的です。
パートナーがもし、『離婚なんて世間体が悪い』『自分の世話をしてくれる人がいなくなったら困る』と思っているなら、デメリットに敏感なアスペルガーは顔色を変えてこれまでの対応を改めるはずです。
ただ問題は、付き合って間もないカップルや、アスペルガー側が『別に離婚してもいいやー』と思っているなら意味がないです。
(個人的には、『別れてもいいやー』とか思ってる相手と一緒にいるのは不健全なので、それはやっぱり別れていいと思います。)
2は最終手段的なところもあるので、常におすすめできる訳ではありませんが、追いつめられているのなら有効な手段です。
まとめ…『うまく受診してもらって、2人で前に進む』は幻想だ
まず、受診してもらうのがとてもハードルが高いということはお分かりいただけたと思います。
そしてそもそも最初に書いたとおり、100歩譲って受診し、アスペルガーの疾患名がついたとしても、治療が改善につながるかは二の次です。これは2人の精神科医と、2人のカウンセラーから同じ状態の話を聞いたので、自覚のないアスペルガーの治療は相当骨が折れるということでしょう。
あるブログによれば、前向きに改善トレーニングに励んでいるアスペルガーの方でも、問題行動のうち50%しか改善されないといいます。
そんな事よりも最も優先的に心を砕かなければいけないのは、今困っている自分自身です。
まずは自分自身を助ける行動をし、その上でこの先どう進んでいくかを考えていただくのが良いと思います。