こんにちは。アセント学習塾の山田です。
みなさまGWはいかがお過ごしでしたか、と言っても
開けてからもう1週間も経ってしまいましたね。
私はと言うと、それはもうダラダラと過ごしました。
ちょっと遠くに出かけたとしても難波どまりで、その行きがけに天王寺図書館があるので
そこである本の確認をしてきました。
中沢けいさんの『うさぎとトランペット』です。
当塾で使用している問題集である、中1標準新演習の国語に
あるシーンの問題が掲載されていて、その解答に疑問があったからです。
以下引用いたします。
「宇佐子ちゃん」
ミキちゃんが改まった声で聞いた。
「ひとりでいるのが好き?」
宇佐子は答えに困った。そんなことは考えたことがなかったからだ。
(中略)
宇佐子は自分の答えが言えないまま、「ミキちゃんは一人でいるのが好きなのかな」と思った。すると、その考えはいつもは重い宇佐子の口からするりと滑り出た。
「ミキちゃんはひとりでいるのが好き?」
宇佐子はそう言って、ミキちゃんの顔を見た。
ひとりでいるのが好きかと宇佐子に聞かれたミキちゃんは、宇佐子の様子を窺うようにしている。それから、きっぱりと言った。
「あたしはひとりでいるのが好きなの」
宇佐子が「そうなんだ」という顔をしたので、ミキちゃんは拍子抜けしたようだ。「ああっ」とため息をついた。
(中略)
「ひとりでいるのが好きなんておかしいって、宇佐子ちゃんは思う? あたしはひとりでいるのが好きなんておかしいよって言われたの」
問い:下線部「『ああっ』とため息をついた」とありますが、このときのミキちゃんの心情として最も適切なものを次から選び、記号で答えなさい。
ア:落胆 イ:安堵 ウ:意外 エ:疑惑
(エデュケーショナルネットワーク 中学標準新演習 中1 p185より)
さあ、皆さんはどれだと思いましたか?
まずは解答から見てみます。
解答はアの落胆でした。解説にはこう書かれていました。
ミキちゃんは、「ひとりでいるのが好き」という自分の思いを、宇佐子が受け入れてくれるだろうかと、不安に思っていた。一行前に「拍子抜け」とあることから、自分の気持ちをわかってくれるかもしれないと思った宇佐子も、他の皆と同じだと感じ、「落胆」したのである。
うーん。そう言われるとそうかもしれません。
私の答えはイの「安堵」だと思いました。
「宇佐子が『そうなんだ』という顔をしたので」とあり、
この「そうなんだ」という顔は納得というか肯定というか、そんな感じをイメージするからです。
それを見たミキちゃんは「拍子抜け」して、ほっとした「ため息」をついたのだと思いました。
でも今この文章を書いていて、「ほっとした」と書いたように
「ああっ」というため息は嘆きを表すのかもしれません。わからん。
問題集にはこのシーンしかありませんでしたので、
図書館で前後や話の大筋を読んで自論を補強したいと思ったというわけです。
結果。わからん。
ミキちゃんは小4の夏に母を亡くし、その直後の2学期の初めに
宇佐子のいる小学校に転校してきました。
ミキちゃんはクラスになじめず、小5になってからはイジメを受けています。
大人びた雰囲気で超然としているので周りから畏怖されています。
宇佐子はのんびりとした性格で、小5の春から少しずつミキちゃんと親しくなっています。
そんな中の小5の1学期の終業式のあとが、上記のシーンとなります。
この会話の直後は、宇佐子が
誰が「ひとりでいるのがおかしい」と言ったのかミキちゃんに問い詰める会話になり、
ミキちゃんはそれをはぐらかして、この話は終わります。
結局、ミキちゃんの父がこの発言をしたことが秋ごろになってわかり、
その際にミキちゃんは、父自身が寂しさを感じているという本心を
ミキちゃんに転嫁しているだけであることを見抜いていて、
父に反発していることも判明します。
それくらい他人を観察したり内心を読んだりできるくらいにミキちゃんは大人な子であります。
一方、宇佐子は宇佐子で学年よりも幼い印象で描写され、感受性が強く、
ミキちゃんの受けるイジメに対して正義感を持った行動はしないものの、
ミキちゃんを気遣って友達であり続けようとします。
子供っぽく素直であり、頑固でもあります。
このような二人で、ミキちゃんは宇佐子のことを
「他の皆と同じだと感じ、『落胆』」するかなぁ、と思うわけです。
あっけらかんと「そうなんだ」という顔をした宇佐子を特別に感じたんじゃないでしょうか。
といっても国語の読解問題においては、出題者の意図と正解が絶対です。
また出題箇所の文章だけが論拠になります。
ですので、私のは難癖なのですが……。
文庫本は絶版になっているようなので、古本か図書館でしか見られないと思うのですが、