【解説】圧縮記帳は課税の繰延べ | 早起き税理士・会計士の「本業ブログ」 by 船戸明会計事務所

早起き税理士・会計士の「本業ブログ」 by 船戸明会計事務所

毎朝4時起き、スポーツと読書が大好きな税理士/公認会計士がお送りする税務・会計に関する本業ブログです。
トピックスやふとした疑問から、税務・会計の話題を毎日お届けします。

こんにちは。
税理士・公認会計士(船戸明)の「本業ブログ」にようこそ。

 たとえば製造業で300万円の機械設備を購入したとします。製造活動はその企業の根幹ですから、機械設備を長く使うことになるでしょう。

 会計処理は、300万円を購入した時点の費用とするわけではなく、いったん「機械装置」という固定資産に計上します。その後、法人税法で定められている耐用年数に従って「減価償却費」という費用を計上。耐用年数が10年だとすると、10年かけて300万円(正確には1円の簿価を残して)が費用計上されることになります。

 毎年の償却費が同じになる「定額法」という方法であれば、1~9年目に30万円、10年目に299,999円の償却費を計上。10年間通して、2,999,999円が費用計上され、機械装置が存在する限り1円が簿価として残り続けます。「定率法」という方法では計算がやや複雑。詳細は省略しますが、端的に言えば最初の年度に大きく償却費が計上され、その後、徐々に償却費は減少していく計算方法です。

 仮に、今回、この機械装置の取得に200万円の補助金が出たとしましょう。200万円の補助金は収益です。ところが、最初の減価償却費は30万円(定額法前提)。となると、差額の170万円に法人税が課されてしまいます。

 そこで認められている手法が圧縮記帳(法人税法第42条等)。補助金200万円分、圧縮損を計上して固定資産の取得価額を圧縮しますので、取得価額は100万円に(=300-200)。そうすると、1~9年目の減価償却費は10万円、10年目の減価償却費は99,999円になります。その効果は次の通り(便宜上残存簿価の1円は無視)。

【圧縮しない場合】
 1年目の収益:200万円★
 機械取得価額:300
 1年目の費用: 30
 差引課税所得:170

 2年目の費用: 30
 3年目の費用: 30
 ……
 10年間費用:300★
 ―――――――――――
 ★部分の差引:▲100…自己負担分の課税所得減少

【圧縮する場合】
 1年目の収益:200★
 1年目圧縮損:200★…補助金収入と相殺
 機械取得価額:100
 1年目の費用: 10
 差引課税所得:▲10

 2年目の費用: 10
 3年目の費用: 10
 ……
 10年間費用:100★
 ―――――――――――
 ★部分の差引:▲100…自己負担分の課税所得減少

 耐用年数という期間を通してみれば、自己負担となった100万円分の費用が計上されることに違いはありません。圧縮しない場合、初年度に税負担が生じますが、その後の償却費は30万円と大きく、所得は小さくなります。一方、圧縮する場合、初年度の税負担は生じませんが、その後の償却費は10万円と小さく、所得は大きくなります。つまり、圧縮記帳は課税を将来に繰り延べているということ。そもそも減価償却という手法も、自己負担した金額を「いつ費用にするか」という技術的解決法です。補助金収入があっても同じで、補助金を差し引いた自己負担額を「いつ費用にするか」の問題であって、自己負担額が費用化される、という事実は変わりません。

 圧縮記帳は初年度の課税を回避するための「課税の繰延べ」。まずは、その認識を持っておく必要があるでしょう。




【お知らせ】-------------------------------------

日刊「早起き税理士のスポーツ観戦記」配信中!
→ https://www.mag2.com/m/0001147393.html
週刊「週刊経理便」配信中!
→ https://www.mag2.com/m/0001689556.html
船戸明会計事務所ホームページ 更新中!
→ http://asayoji.fan.coocan.jp