住所の判定(2) | 早起き税理士・会計士の「本業ブログ」 by 船戸明会計事務所

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 住所って、どこでしょうか。きのうの続きで、今日は相続税のお話です。所得税と比較しながら見てみましょう。


 おさらいですが、所得税での納税義務者の区分は以下でした。


1)居住者(非永住者を除く):国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人
2)居住者(非永住者):居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人
3)非居住者:居住者以外の個人


 では、相続税ではどう区分しているかというと。


1)居住無制限納税義務者:財産を取得した時に、日本に住所を有する者
2)非居住無制限納税義務者:財産を取得した時に、日本に住所を有しない者のうち、日本の国籍を有しており、かつ、相続開始前5年以内において日本に住所を有したことがある者
3)制限納税義務者:財産を取得した時に、日本に住所を有しない者(2)を除く)


 平たく言えば、所得税も相続税も1)は日本人、3)は外国人、そして2)はその狭間を狙った租税回避(脱法行為)防止のための定義です。


 1)の日本人は、全世界所得に所得税がかかりますし、全世界財産に相続税がかかります。3)の外国人は、日本国内での所得に所得税がかかりますし、日本国内の財産に相続税がかかります。



 では2)はどうか。所得税が2)で想定しているのは外国人です。そして、国内所得+国内で支払われた所得+国外から送金された所得に課税されます。つまり、海外で支払われる所得には、所得税が課税されないということです。課税を緩める方向の規定です。


 逆に、相続税が2)で想定しているのは日本人です。全世界財産に対して課税されます。課税を強化する方向での規定です。



 2)の想定の違いが、日本国籍の有無という規定の仕方に現れています。


 例えば、所得税を考えてみましょう。以前の2)非永住者の定義は、「日本に永住する意思がない」「現在までの日本での居住期間が5年以下」という条件でした。
 すると、こんな事例がありました。H9年からH13年まで外資系金融機関の日本支店で働いていた外国人。日本に永住する意思はありません。H14年にいったん帰国し、H15年に再来日します。
 当時の規定では、この方、2)の非永住者として、アメリカで支払われる所得(給与)に日本の所得税は課税されていませんでした。でも、どう考えても日本の居住者です。所得税法の定義を悪用しているのですね。
 こうした外国人による所得税法の悪用を防止するために、2)の定義を改正しました。従って、想定しているのは外国人であるため、「日本国籍を有さない」という定義が加わっています。



 一方の相続税。こちらは相続人になると予想される日本人が、海外に住所を移し、かつ財産も海外に移してしまうと、3)の制限納税義務者になってしまい、相続税を課すことが出来なくなります。
 相続直前に海外に住所を移した日本人が、海外にある財産を相続して、相続税を免れる、という事案があったのですね。
 そこで、2)の規定で、日本人が、日本に住所を有しない場合であっても、5年以内に日本に住所を有していれば、全世界財産について相続税を課す、という縛りをかけたのですね。想定しているのが日本人であるため、「日本国籍を有する」という定義を加えたのです。



 まとめましょう。普通の日本人は全世界の所得や財産に所得税、相続税が課されます。

 普通の外国人は、日本で稼いだ所得や日本にある財産については所得税、相続税が課されます。


 外国人で日本に住んでいても、過去の居住期間が短い場合には、日本で稼いだ所得だけに課税することで勘弁してあげましょう。


 日本人で外国に住んでいても、過去日本に住んでいたのであれば、外国にある財産も見逃さず相続税をいただきますよ。



 今日も長くなりましたね、すいません。