100%グループ内の寄附金 | 早起き税理士・会計士の「本業ブログ」 by 船戸明会計事務所

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 TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のグループ4社が、大阪国税局の税務調査を受け、CCCに支払った業務委託費に実態がないと指摘され、16億円の申告漏れ、過少申告加算税含めて5億円の追徴課税を支払ったそうです。


 おそらく、CCCが持株会社で、その下に今回のグループ4社を含む事業会社がぶら下がっている組織体系だったのだと想像します。そして、CCCで必要となる本部経費やCCCの名称使用料などの名目で、事業会社から業務委託費を徴収していたのでしょう。


 その業務委託費に実態がない、つまり単に16億円というお金の授受(寄附)をしていただけで、業務を委託するという関係にはなかったと認定された、ということです。


 この場合、CCC及びグループ4社(以下「X社達」としましょう)での課税関係はどうなるのでしょうか。


  CCC:もらった16億円に対して法人税課税
  X社達:支払った16億円は経費計上されない
      →その分課税所得が増加し、法人税課税


 つまり、CCC、X社達のどちらでも法人税が課税される二重課税状態になるのですね。だからこそ、ニュースにもなるわけです。



 ただし、こうしたニュースが聞けるのも、あと1年くらいでしょうか。今年の10月以降、制度が変わり、内国法人に支配された100%グループ内の寄附金であれば、


  もらった会社:受贈益の益金不算入
  支払った会社:寄附金の損金不算入


ということで、払った会社で経費も認めない代わりに、もらった会社で収益にも計上しないことになりました。


 先の例で言うと、X社達が支払った16億円は経費に計上されないのですが、CCCがもらった16億円も収益に計上しないということです。その結果、


  CCC:もらった16億円に対して法人税は課税されない
  X社達:支払った16億円は経費計上されない
      →その分課税所得が増加し、法人税課税


となり、X社達で課税されるのみで、二重課税にはなりません。



 この制度、100%グループ内であれば、課税関係なく現金の移動をすることが出来ますので、いろんな場面で使い勝手のいい制度ではないかと考えます。


 業績不振に陥っているグループ会社に現金を融通したり、突発的な資金が必要な会社に現金を回したり。これまでは、貸付金にして、利息の授受をして、ということをしていたものが、純粋に現金を寄附してしまうことが出来るわけです。



 ただし、注意点は、個人による100%支配の場合は適用されない、という点です。


  夫---(100%)--→A社
  妻---(100%)--→B社


 この場合、夫婦は親族ですので一体と考え、A社とB社は、個人によって支配された100%グループ内の関係になります。CCCという会社によって支配される上記の関係とは異なります。


 このケースで、A社からB社への寄附に、上記制度を適用してしまうと、夫の財産を無税で妻に移転することが可能になってしまいます。つまり、本来、夫から妻への贈与として贈与税が課税されるべきところ、その課税が出来なくなってしまうのですね。


 それは制度の本意ではありませんので、あくまで法人税の世界で完結する、しかも海外には関係しない国内の会社にのみ、適用されることに留意が必要です。