開戦日全霊で猫抱いて座す 一郎
一家戦没以来不死なる竈猫
漆黒たらんと白鳥のこころざし
とりあへず生まれることを拒むな獏
乳房あれ人日の暗黒にこそ
あとがきに、一郎さんが言う
無数の末期の吐息と無数の産声
つまり「生死の螺旋をどこまでも遡り」
全霊で猫を抱き、無となって座す
生きている白鳥は死の闇から逃れることはない
生まれようとしている獏をこの世に引き受ける
1月7日の人の日を暗黒と言い
「乳房あれ」と願う
一郎さんの俳句は読者を引きつけるというより、
置いてきぼりにしてしまう村上春樹作品に良く似ている
満月が毀れてはデモ隊となる 一郎
理解しようとせず、心を遊ばせて絵画をみるように
そのまま味わえばいい蓼