趙に、秦の国王を皇帝だと認めさせようとする、魏の国の将軍・新垣衍(しんこうえん)と面会し、新垣衍を目の前にして、だまって何も語ろうとしない魯仲連(ろちゅうれん)先生……

 

 二人は沈黙したまま、気まずい雰囲気が続きます(笑)

 

 耐えきれなくなった新垣衍が話を切り出しました。

 「わしはこの包囲された城内におる者を見ておると、みんな趙の公子の平原君(へいげんくん)から、何かをせしめようとしている者ばかりだ。ところが、魯仲連先生だけは見た所そうでもなさそうだ。一体どうして、立ち去りもせず、こんな所で長湯しているのですか」

 

 魯仲連は言います。

 「秦という国は礼儀がなく、詐術を使って人をおとしいれ、人民を奴隷のように使っております。あの国の王が皇帝となり、天下の政治を取るようなことがあれば、私はもう東の海に飛び込んで死ぬより他はない。あの国の民になるのだけは我慢がなりませぬ。

 私がこうして将軍にお目に掛かりました理由は、この趙を助けるためです」

 

 新垣衍はあきれて言いました。

 「助けるも何も、一体この状況で何をされるおつもりか」

 

 すると、魯仲連はこう言いました。

 「私は、の国と燕の国に、この趙を助けるように兵を出させるつもりです」

 

  魯仲連の途方もない話に、新垣衍はますますあきれます。

 「燕のことは他国だから、わしも知らんが、そもそもわしはの国の将軍だぞ。先生はどうしてに助けなど出させることができるのか」

 

 すると、魯仲連はきっぱりこう言い切りました。

 「には、秦が帝の称号を称することの害が、まだ良くわかっておりませぬ。それがわかったなら、きっと趙を助けます」

 

 新垣衍はため息をつきながら、魯仲連をなだめました。

 「先生は下男たちのことを御存じであろう。十人いても、たった一人につき従っているのは、主人が恐ろしいのだ」

 

 魯仲連はあきれ顔になり、「はてさて、は秦に比べれば下男のごときものでありましたか……」と新垣衍にたずねると、即座に「さよう」と答える新垣衍。

 

 この後、すっかり秦に対して弱気になってしまっている、魏の将軍・新垣衍に対し、魯仲連は思いがけない大胆な挑発をします。

 

 いよいよ次回のブログは、我らが魯仲連先生の真骨頂が見られます。

 

 (2013/05/05パリブログ「過去は未来に活かされる」よりリメイク)