早速、前回の韓信の話の続きです。

 

 韓信というのは すごく頭の切れる人だったのですが、若い頃は貧乏で品行も悪かったんです。
 ある時なんて働き口も見つからずに、お腹をすかして川で釣りをしていました。

 

 それを見ていた綿打ちをやっていたおばさんが、韓信をあわれんで、ずっと一ヶ月ぐらい、ご飯を持っていってやりました。
 韓信は喜んで、「俺は必ず、おばさんにお礼をするからな」 って言いました。
 おばさんは怒って、「あたしはお礼なんて、あてにするものか。あんたが気の毒だから飯を食わしてやっただけだ」 と、言い返しました。

 

 まあ、そりゃそうです(笑)
 その状況の韓信を見て、お礼を期待してご飯を持っていく人はいません。

 

 でも、きっと韓信は本当にお礼をするつもりだったんだと思う……
 今はお礼ができなくても、そのうち必ず大成して、おばさんにお礼ができるようにするんだ、という決意があったのではないかと思うんです。

 

 話は変わりますが、ある時、韓信と一緒に働いている屠殺者の仲間で、韓信のことを馬鹿にする若者がいたんですね。
 「お前は、図体はでかくて剣をぶら下げているけれど、心の中はいつもビクついているんだろう」
 そんな風に言って、大勢の前で韓信をからかいました。

 

 どこにでもいる いじめっ子です。
 その上で、「悔しかったら、死ぬ気で剣を抜いて 俺を刺してみろ。死ぬのが怖けりゃ 俺の股をくぐれ」と言って、韓信を挑発しました。

 

 韓信はしばらく彼を見ていて、それから 彼の股の下をくぐりました。
 みんなそれを見て、どっと笑いはやしました。
 全くどこまでいっても、パッとしない人というか(笑)

 

 でもきっと韓信には、こんな所で間違って命を落としてたまるか、という計算があったんだと思います。
 自分は必ず大物になるというのを、何の根拠も無いけれど、この人は固く信じているんですね。

 ちなみにこのブログの元原稿を書いた2013年の僕は、まだ本も出版していなくて、占い師としてはほとんど知名度も実績もない状態でした。
 この先の未来のあても何もなくて、自分に言い聞かせるような気持ちで、韓信の記事を書いていたのを思い出します。

 

 何のあてが無くても、自分がなりたい未来を強く信じている……
 そうしている内に、不思議なことにやがて、本当にその未来を引き寄せてしまったりします。

 

 (2013/04/07「大望をいだく者」をリメイク)