体の中で、全ての構造物は膜に包まれている。
膜は決して硬くはない、”閉じているが開かれている”。
なぜなら、”動的な”壁だから。
骨格筋の場合、細胞は幾つか”合体”しているが、基本は細胞膜で包まれる。
合体して作り出した繊維を筋線維というが、それは束として膜に包まれる。
ある一定の束になるとまた別の膜で包む。
膜の間を血管と神経というインフラを通す。
膜間を監視装置である免疫系が動く。
膜を介して筋線維同士、そして臓器同士が”会話”する。
僕たち外科医は、その膜をしっかりと理解して病変に到達する。
もっとも敏感な指先を使って、膜の間を通り、膜を介して”どけ”、ここぞと思ったところだけ膜を破る。
膜の損傷をいかに”リーズナブル”にできるか、が、大切。
何度も何箇所も、そして広範囲に破るから臓器同士のメッセージ、”体の声”はうまく伝わらなくなる。
伝えられなければ、伝わらなければ、全ての事象、知識は、自分よがり、”思い上がり”である。
閉じているが開かれている、そして動いている膜をどう理解するか?
人同士の関係も同じだと思う。
大きく優しく包み込む膜を持っていたい。
その膜を通してたくさんの知識を伝えてみたい、もらいたい。
この写真、腎臓と尿管、そして腸管を包む膜や、7種類の骨格筋の膜の間を指で”進入”し、最後の”腸腰筋”膜だけに穴を開け、その筋群の”カーテン”を開けて、手術している所です。