昨日の入門講座は、三島由紀夫原作のオペラ『午後の曳舟』のお話。
山本耕平さんの歌の素晴らしさ。物語の主人公の正直さ。そして三島文学。。。
昨日の福音朗読箇所は宮清めの場面(ルカ19・45-48)でしたし、それもあいまって舞台さながら、緊迫感のあるお話が展開したのですが、そんな中からちょっとほっこりした、日常生活における音楽のお話です。
『 宗教っていうものが本当に音楽と深い関わりをもってる。
イエスは殺される前の晩、詩編を歌ってから出かけたって書いてある。(cf.マルコ14・26)
「どんな歌だったんだろうな」と思って。音源ないから、絶対わからないですけど。楽譜もない時代ですから。
だけど、なんで宗教はこんなに歌と関わりがあるのかっていうと、
おそらくは、人と人を結ぶためだと私は思っています。
芸術って、みんな、共感するじゃないですか。
たとえば、ある歌を歌って、「私は好きだ」「私は嫌いだ」といろいろありますよ。
だけど、本当に素晴らしい歌、素晴らしい芸術は全員の心をさらいます。私、そんな現場、何度も見て来た。
人の心をさらって、一つにするんです。
みんなでよく讃美歌を歌いますけど、みんなで知ってる歌を、いい和声で、いい伴奏で弾くと、心が清々しいというか、高揚感があるというか・・・ですよね。
でも一番は、心がみんなとつながること。それがやっぱり歌のすごいところで。
宗教なんて、みんなを一つにする。争いをなくして、お互いに助け合うコミュニティをつくるって、それに尽きるわけですけど、
それを下手に使うと、全体主義、独裁国家のナチスが歌で高揚したり、軍歌で元気づけたり、音楽がそんなふうに使われる危険性もあるんだけれども、
その軍歌や全体主義の歌の、何が間違っているかというと、それが争いのための歌だから。
自分たちが絶対で、他は間違っている。自分たちの高揚感を高めて、さあ、闘うぞ、みたいなね。
やがてこれにみんなを屈服させるぞ、みたいな。
キリスト教が歌を本当に大切にするのは、逆ですね。
あなたと本当に心をかよわせたい。
あなたと本当にひとつでありたい。
あなたの十字架、それを私も一緒に背負いたい。
実はキリスト教はそこにあるわけですね。
だから、十字架にかかる前の日に、詩編を歌って、出発した。
弟子たちと心をひとつにしたんですよ。
世界中と心をかよわせたかったんですよ。
「さあ、ユダヤ人、律法学者たちをやっつけるぞ」っていう歌を歌って、出かけたわけじゃない。
殺されにいった。
音楽の秘密ってありますよ。それは、なんかこう、そうだろうなと思っていても、なかなかそうもいかないなという中で、音楽の力でちょっと勇気が出るみたいなこと、確かにあります。
音楽の力って、ほんとに不思議。
こうやってしゃべっていても、ちょっと音楽的なんですよね。リズムをとっているでしょ?
「こうやってしゃべっていても、ちょっと、音楽的なんですよね」って、これ、休符、メロディ、入っているでしょ?
だからぼくら、音楽でちゃんとコミュニケーション取ってるんですよ、実は。
鳥の声を楽譜にしたの、誰だっけ。・・・メシアンだ。
メシアン、日本に来て、日本の野鳥の声を全部採譜して帰った。
鳥のカタログとかね、名曲の数々をつくりましたけど。
音程ってあるんですよ。
「音程ってあるんですよ。」これ、オクターブ使ってるんですよね。
歌ってるんですよ、人って。
だからほんとにいい歌を歌えるのが芝居、役者のセリフ、そこにメロディをつけるのが作曲家だけども、
イエスさまがどんな音程で、どんなしゃべり方してたか。それは、民衆、鷲づかみだったはず。
みんな、もううっとりして、夢中になって聴いていた。
宗教が音楽を大切にするっていうのは、そこに秘められているメッセージが本当に尊くて素晴らしいものだから、なんとかそれを人に伝えようとするのが宗教家の仕事だし、あるいはキリスト者の使命だし、
そんなときに、音楽が秘密を知っているんだっていうふうに思ったらいいと思います。
グレゴリアン聖歌とかは西洋音楽の発祥だけど、それはやっぱり聖堂の中で、ユニゾンで、アカペラで、修道士たちが詩編の言葉一つひとつ、イエスさまの言葉一つひとつを、大切に、大切に、語りかつ歌っているっていう、その思いが音楽を支えているので、いまだにキリスト教は音楽と切っても切れない。
それは、福音をどうしても人の心に伝えたいという、熱い思いがイエスの中にあったからっていうことだと私は思ってます。』
改めて読むと、この音楽のお話は、「あなたと本当に心をかよわせたい」と言って、すべての人のために生まれたキリストを感じました(お話に出てくるのは、十字架に向かう主ですが・・・)。
待降節の気配を感じて、わくわくしました。
クリスマスに向かって、人と人の間に愛と平和が満ちていきますように。
来週も、晴佐久神父の講座(歌)です。
お待ちしております
Lydia