※今回の内容は、後半、精神病に対して差別的な内容が含まれています。

不快に感じられる方は、読まないでください。

 

 

夏休み、二週間預かる予定の日のだいぶ前に、家でだらだら過ごす陸に元夫は堪忍袋の尾が切れたようで、

 
「もうこいつはいらない!引き取れ!」
 
と言って車で何時間もかけてうちのアパートに送ってきました。
 
気まぐれな元夫のこと、いつくるかわからない陸のためにエアコンとパソコンを設置していたので、すぐに受けいれ、本屋さんに連れていき
1週間で解けそうな問題集を国数英の3教科ぶん買い、1日六時間ほど付きっきりで勉強をしました。
(教えることは出来ないので笑い泣き、参考書をみて一緒に考えました)
小学校5、6年の2年間、学習塾に通い、
強化合宿にも参加したことのある陸は、逃げ出さず辛抱強く勉強することができました。
 
(彼氏は、陸のことを心配しているわりには、
積極的に関わることはなく、一緒に食事をしたり、雑談に加わったりしていました)
 
また、おやつも含めてしっかりご飯を食べさせ、勉強が終わるとお風呂に入って、
就寝時間までネット麻雀を許可し、
3日に1回、半日だけ彼氏(現旦那)にゲームセンターやドライブに連れ出してもらって気分転換をしました。
 
1週間でだいたい解けないところがわかったので数学の中学校教諭である彼氏の友達に、
3日間、個人授業をお願いしました。
 
陸も、最初は
 
「僕は全然学校の勉強なんてわからない
A高校どころかB高校でも無理だと思う」
 
と言っていましたが、最後あたりには、
 
「きつかったけど、集中したらなんとかなるもんだね。私立で習ったこと、忘れていたけど
何を忘れていたかを思い出した感じだよ」
 
「B高校だったら受験できるかも知れない」
 
と言うようになりました。
 
 
しかし、陸が連れてこられた1日目から
父親から毎日
 
「陸が勉強できるはずがない、寂しいから
電話に出せ」
 
「いい加減な生活をしているさくらたちに、陸を任せられない」
 
「今まで必死で父子家庭で頑張ってきたのに、陸を奪うつもりか」
 
と最初の態度とは真逆の内容の電話があり、
私も陸も電話に出て対応していたのですが、
 
3日に1度、涙ながらに書いたと思われる、
10枚近い便箋にびっしりしたためられた手紙が3通届いた頃、
 
陸から
 
「お母さん、ある程度勉強も落ち着いたから
帰るよ。これ以上いたら、帰ってからまた
こじれてしまうから。
 
出来るだけ学校は行くようにするし、
高校も話し合ってみる。
ただ、僕ひとりで説得できないときは、
お母さんも加勢してね」
 
と言われ、
私も
 
「お父さんと一緒に暮らしているのは陸だから、無理強いはできないけど、困ったことがあったら出来るだけ力になるから、連絡してね」
 
と言いました。
 
 
予定外だったため、車の都合がつかず、バスで駅まで送ったとき、
 
「陸を置いて出ていったお母さんがいうことではないけれど、こちらへ来ない?」
 
と言うと、
 
「たまに嫌になることはあるけど、ずっと
面倒を見てくれたのはお父さんだから。」
 
と言って、帰っていきました。
 
 
夏休みが終わり、学校が始まると、陸と父親の
生活も元通りになり、登校数は増えたものの
ネット麻雀に明け暮れる陸と、受け入れられない父親の対立が表面化しました。
 
夏休み以来、週に1回ほど、陸から父親に対して、
 
『進学について、意味不明な要求をされる
(野球経験のない陸に、
"A高校で野球をしてピッチャーになり、甲子園へ行かないと、認めない"、など)
『話すことが一貫せず、気分で怒鳴られる』
といった不満のメールが来るようになった一方で、
 
父親は、陸に対する不満はあるものの、
 
『なにか話すと、さくらに陸を取り上げられてしまう』
 
という危機感からか、ほとんど連絡が来なくなりました。
 
また、姉からの連絡によると、夏休みの時のようなことがあり、父親が陸をつれて来たため、数日間私の実家で預かったことがありました。
 
通学のため、毎日母が駅まで陸を送ったそうですが、3日後にそのまま自宅に帰ってしまったため、そちらも一度関わりが絶たれていました。
 
 
その間に、私は自分の精神科の主治医と、
元夫との関わりについてよく話し合い、
今までの長い付き合いのなかでの発言や、行動パターンを伝えたところ、
 
『あなたの前のご主人は、
 
自己愛性人格障害
 
の可能性があるのでは?』
 
と言われました。
 
彼氏さんもすごく危惧してると思うんだけど、
元旦那さんは、結婚生活で、私が双極性障害を発症した大きな一因だよね。
あなたは私の患者さんだから、またぶり返して欲しくないので、できればあまり関わりをもってほしくないのだけれど…
 
とまで言っていただきました。
とても、ありがたかったのですが、
 
「もう少し、陸が、精神的に自立ができたらそうしたいです」
 
としか言えませんでした。
 
 
冬休みが近づいたある日、仕事の関係でつながりのある児童相談所の職員の方に、元夫親子について色々話をしていた姉から連絡があり、
 
「父親と陸の親子喧嘩がひどく
(主に父親の怒鳴り声と、恐らく竹刀で壁などを叩く音)、近所から通報があったらしい。
進学先についても、あなたたち家族だけでは
話がまとまらないから、第三者の児童相談所を入れて、話し合ってはどう?」
 
と提案してくれたため、元夫をどうにか説得し
(児童相談所の方の、お話の仕方が上手だったのですが)
二学期の終業式の日に、児童相談所で話し合いをもつことができました。
 
あらかじめ、元夫の人となりなどを、相談員さんに電話でお話しする時間ももって、臨みました。
 
 
12月24日、児童相談所のドアが開けっぱなしで風がびゅうびゅう吹き込む入り口のテーブルで、
児童相談所の相談員さん、私、陸は約束の時間を30分過ぎた元夫を待っていました。
(陸は、先に私が家によって拾っていました)
 
なぜか満面の笑顔で手を振りながら入ってきた元夫は、遅刻を謝ることなく、
同席されている男性の相談員さんが自分より
10歳ほど若く、穏やかそうで、「先生」の
ような力がない、と判断したのか
 
「やあやあ、みなさん、お揃いで!
さくらさんも元気かい?
今日はまた、大げさな場を設けてしまって、
人に迷惑をかけていると思わないとは、
やっぱりまだあんたも精神病がなおっていないんだねえ」
 
とにらみつけるようにして大きな声で話しだしました。
 
(以下、録音などもしていなかったため、会話内容は大体になります)
 
相談員さん
「いえ、寒い中お集まりいただいてありがとうございました。では、お母さんがもたれている陸君の心配事や、
今後の進路について、お話ししましょうか」
 
「まず、最近、何か生活のことで困られているようなことはないですか?」
 
元夫
「私と陸の二人ならば、何も問題はないのですよ。ただ、このさくらは、陸が小さい頃に、
精神病になって出て行ったんですよ。
 
少しこちらが気を許したからと言って、
生活に割り込もうとするのがおかしいんです。
母親が割り込まなかったら、普通に生活できているよなあ、陸?」
 
陸は黙って下を向いていました。
 
「確かに、出て行ったのは私です。
 
もちろん陸のためには苦にはならないけれど、
離れた地で生活の基盤ができてしまった私に
 
母親としての役割をずっと求めてきたのはあなただし、距離を置けと言われれば、陸のために
なるのならば喜んでそうします。
 
けれど、あなたがしていることは、父親として本当に陸の立場になって行動をしているとは
思えない。
 
1回麻雀で遅刻したことをきっかけで、先生方とも陸自身とも十分話し合わずに私立中学をやめさせて、よく考えずに体調や気持ちのリズムを崩したまますぐ近くの公立に転校させて、
いじめの標的になりそうな身なりをさせて。
 
すべて、あなたが悪い訳じゃないのはわかっている。ひとりでここまで育ててきたのはすごいことだと思うけど、陸が失敗したとき、一方的に罰を与えるのではなくて、もう少し、話し合って、陸に自分で考えて、選択する力をつけていかないと、この先何もできない人間になってしまうよ。
 
陸とも、一緒に暮らしているわりには、麻雀との向き合い方も、進学先もきちんと話し合えてないようだけど、私はあなたが言うように、
まともな判断ができない病気だから、この際、この場を借りて、第3者に立ち会ってもらって、陸がどこに向かって努力したらいいのか
はっきりさせたい」
 
としどろもどろながらに言いました。
 
元夫は、ニヤニヤしながら
身ぶり手振りをつけて、大きな声で話しました。
 
「私は、麻雀は嫌いだから、許さない。
時間を守ろうが、関係ない。だから、パソコンも2回、陸の前で叩き壊してやった。
飯も抜いて、何が悪いのかはっきり教えてきた。
そうだよな?陸。」
 
「教育関係の知り合いが多い私が言うのだから、偏差値69のA高校に行くべきなのは、間違いない。
有名大学への進学率は段違いで、将来も安泰だし、これはすべて陸のため。
あそこに行けば、早く父子家庭になって
頑張ってきた私が、どれだけちゃんとしているか、回りがみんなわかるはず。」
 
「偏差値58のB高校はそこそこ大学進学率も高いかも知れないし、県内の公務員はかなりB高校出身者は多いかも知れないけど、A高校に比べたら
レベルは下の下だよ。あんなところにやったって、誰にも自慢にもなりはしない」
 
「あんたも(私)、看護師とはいえ、
最初は大学病院で働いていたから、
私も鼻が高かったのに、ちょっと病気したからってやめちゃってね。
私の妻が精神病にかかるなんてね、それは
情けない思いをしたんだよ。
陸に、そんな人生を歩かせるわけにはいかないんだよね」
 
しばらく待って、相談員さんは、
「麻雀については、各自のご家庭の対処の仕方があられると思いますので、そこはまたゆっくり話し合っていただいて」
 
「高校については、陸くんの実際の成績と、
A高校に入学したとして、厳しい今の陸くんが勉強についていけるか、その点もふまえて考えられた方がいいのではないでしょうか。
それと、B高校も、ネームバリューや、
有名大学への進学率はA高校に比べると低いかも知れませんが、先生方の対応や就職率はいいと聞いていますよ」
と言われました。
 
私も、
麻雀については、今話してもらちが明かないと考え
・A高校に行きたくても、ようやくクラスで
中盤になったくらいの陸の成績で合格できるとは思えない、落ちたときの私立高校への進学はどう考えているのか
・合格できたとして、高い学習意欲がないと、
ついていけないと聞いている。中学までの基礎学力もあやしいのに、今までの生活をすべて切り換えて、勉強一本に絞った生活ができると
思うのか
と元夫に聞きました。
 
 
つづきます