『プリティ・リーグ』 | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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という訳で野球つながりでこちらの作品。

プリティ・リーグ

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トム・ハンクスと、ジーナ・デイヴィスだったかな。
第二次大戦中、徴兵制の影響で
リーグを維持できなくなったMLBが、
苦肉の策として、女性だけの野球チームを作り、
なんとか代替の興業を成り立たせようと試みる。


そんな嘘のような話が、あの国の場合、
紛うことなき実話なのである。それだけでまず愕然。
もっとも今のような時代であれば、むしろこの話の
現実味はより増しているのかもしれないとも思う。


だが本作が公開された頃、つまり僕が
まだ二十代だった当時でさえ、
たぶんそんな発想は影も形も有り得なかった。
そのさらに四十年も前の時代であれば
きっとなおさらだったことだろう。

だからそんな、いわば非常識な夢物語のような発想を、
曲りなりにも実現してしまった人たちがいるという点が、
やはりアメリカという国の強さなのではないかと、
時折僕はなんとなくそんなことを考えるのである。
あるいはこの文は、今となっては最早過去形で
記されて然るべきなのかもしれないけれど。


たとえばディズニーランドだって同じだと思う。
遊園地の中に本当に鉄道を敷き蒸気船を走らせて、
自分を育んだ愛すべき古きよき時代の街並みや、
あるいは輝かしい未来の都市の姿をその一画だけに作り出す。
しかもその国では、カートゥーンから抜け出してきた
キャラクターたちがホストとして来客を歓待するのである。


そんな光景を夢想し、現実にしようと考えた人物がいた。
それを具現化する方法を真剣になって模索した。
そのすべてのエネルギーがなければ、あんな場所は
おそらくこの世に生れ落ちてなどないのである。

しかもそれが今や、自国のみならず、世界の何箇所かに
本当に存在している。まさに夢物語だと思う。


だから、TDLのあの成功を目の当たりにし、
追従して雨後の竹の子のように出て来た
我が国の第三セクターによる似非テーマパークらの、
発想がどれほど貧困だったことかを
思い出してもらえれば、
あるいはこの説にも十分に
頷いていただけるのではないかと思う。


いや、今回はしょっぱなから相当横道ですね。
しゃくしゃくと映画の話に戻ることに致しましょう。

まあ内容は最初に書いた通りのもの。
チームのサクセス・ストーリーであり、
姉と妹との葛藤を描いたドラマであり、
(男をめぐるものではないところがある意味斬新)
そしてトム・ハンクス演じるところのドゥーガンのモデル、
J.フォックスなる大リーガーへのオマージュである。


一部フィクションを交えながら、
基本的には実際の出来事に忠実に、
それらの要素が実に丁寧に纏め上げられている。
見て損はない作品であることは間違いがない。


だがこれ、実は僕にとっては終始、
マドンナを見るための映画なのである。

当時マドンナは6thアルバムEROTICA発表の直後。
すでにポップ・スターの座を不動のものとしていものの
その牽引役を果たしたセックス・シンボルとしての
自身のイメージにある意味逡巡を抱き始めた
時期であったのではないかと思われる。


その彼女が、本作ではいわば、
コメディー・リリーフとして登場している。
役柄もぴたりとはまり、コケティッシュとしか
いいようのない独特の魅力を
存分に発揮していると印象である。


相方のロージー・オドネルなる役者はとにかく芸達者。
あの頃はTVシリーズのアリーや、
あるいはフリントストーンの映画版などにも起用され、
独特の存在感を放っていた。

そしてエンドロールとともに、
マドンナによる主題歌が静かに流れ出す。
――This Used Be My Playground。
ここはかつて私の遊び場だった。


これだけでもう、ノスタルジー全開じゃないですか。
曲調もサビも映画のテーマと強固に結びついて、
ひしひしと胸に迫ってくる。


この曲のPVがなかなか商品化されないのは本当に残念。
まあ肖像権の問題とかあって、
色々と難しいのだろうことは
なんとなく察せられない訳ではないのだけれど。

さて、この後マドンナは、本格的に映画の世界に進出すべく、
ミュージカル『エビータ』の映画化という企画に挑んでいる。


でも残念ながらこの役柄、キャラクターが違い過ぎた。
ゴールデン・グローブ賞こそ獲ってはいるけれど、
さほど評価が高い印象はない。
でもまあ、逆にいえばそのおかげで、彼女は音楽に
戻ってきてくれたのだといえるのかもしれないけれど。


一応見ましたよ。この『エビータ』も。ビデオでだけど。
率直にいって散漫な印象。ミュージカルとして、
マドンナとA. バンデラスの歌を前面に引き出したいのか
といえばそうでもないし、かといって史劇にも
成りきれているとは到底いえない。

夫妻の関係性に関しては徹底的に描写不足。これでは
ラストのエヴァの死が生きてくるはずもない。
まあそんな感じでした。


ところで、びっくりしたというか唖然としてしまったのは
ニコラス・ケイジらしき人が端役で出演していたこと。


――でもこの『エビータ』はミュージカルなんです。

だから当然、彼も他の役者さんと一緒に歌う訳ですよ。
歌うニコラス・ケイジ。それだけでとにかく笑えました。
二小節分ソロもあり、それなりの破壊力でした。


ちなみに、彼のキャリアの中では同作は
滅多に言及されることがないようです。
もっとも当時はニコラス・グレイスとかいう
名前を使っていたようですけれど。


でもひょっとすると全然違うかもしれません。
エンドロールの役柄、実はちょっとだけ違っていたし。
きっといろいろあって、
いわば黒歴史扱いなのかもとか思いました。

でも、今回調べて初めて知ったのですけれど、
ニコラス・ケイジってコッポラの甥御さんなんですね。
なんだかいろいろと納得してしまった次第です。