ブログラジオ ♯22 Love’s a Place to Be | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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前回も名前を出しておいたけれど、
SOSと並ぶ代表的な
BIG IN JAPANであるこのバンド。
ワークシャイという。
シャイとかいっているけれど、まあ
あたしら働くのあんまり好きじゃないんだけどな
みたいなニュアンスも、たぶん込められていなくはない。

僕自身はキャリアを全部追っかけたりまではしていないので、
手持ちの作品はデビュー作であるGolden Mileのみ。
だがとにかくこのアルバムは稀に見る大傑作だった。

生音の手触りを大事にしたギターとピアノ。
フルートやサキソフォンなど、
巧みに導入されてくる管楽器もまた然り。
なのにベースラインだけは、
バリバリに加工された音色で、それがまた
曲の印象を独特のものにしてくれている。
トッド・ラングレンのカヴァーも、原曲より
よほど洗練された手触りで、
むしろ僕自身このワークシャイのヴァージョンで
トッドのソングライターとしての卓越したセンスに
改めて気づかされたような具合だった。

また、アルバムのハイライト・トラックである
Somewhereには、こっそりとハロルド・アーレンが
二小節分くらい引用されていたりもする。
ちなみに『虹の彼方に』書いた人ね。
『オズの魔法使い』の主題歌。引用も同曲から。

実はこういう遊びは個人的に大好きである。
しかし、安易にやられてしまうと
本当にみっともないだけなので、
なかなかここまで感心させられることはない。
話飛ぶけど、だからあんまりラップって
好きじゃないんだよね、たぶん。
結局全部原曲におんぶにだっこじゃないかよって
たいていの場合感じてしまう。
一方で、ボウイがYoung Americanでやっている
A Day in the Lifeの引用は文句なしにかっこいい。
やるならあのくらいのさりげなさでやってくれないと。

それからそういえばチェット・ベイカーなる
ジャズミュージシャンの存在も、
彼らから教えてもらったようなものである。

さて、そのアルバムからの大ヒットシングルが、
今回ご紹介のLove’s a Place to Beというトラック。
FM YOKOHAMAが当時プライムカットと称して
一定期間へヴィー・ローテーションをかけ、
おかげでバンドは一気に本邦での注目を集めた。
速いテンポのピアノのコードワークのみによる
個性的なイントロが冒頭からキャチーさをアピールし
聴くものをひきつけずにはいない。
かぶさってくるストリングスとスキャットの加減も見事。
またこの曲は、ワークシャイの二人が
二人ともリードヴォーカルを取れるという
利点を十分活かしきっている。

当時彼らはMagnetというイギリスの
弱小インディーズとの契約しか、
たぶん持っていなかったはずである。
であれば当然アメリカでの知名度など皆無に等しく、
メディアに取り上げられるような機会もなかった。
だから、おそらくはその音楽だけを手がかりに
このバンドのいわば可能性に賭けるという決断の出来た
この時のラジオ局のスタッフには改めて敬意を表したいな
くらいにさえ思う。
おかげでどうやらこの二人はまだ音楽活動を
決してやめてはいない様子である。

トリビア。
詳しい説明をすると長くなるのでなるべく省くが、
海外のアーティストの場合、契約が変わって
同じ作品が別の会社から再発売され、
既存のカタログが廃盤になってしまうということは
結構頻繁に起こってしまう。しかも残念なことに
そのたびにアルバムの編成が
微妙に変わってしまったりさえする。
そういう訳で今手に入るGolden Mileは
最初に国内に紹介された時のものとは
収録曲や曲順が少なからず違っているはずである。
で、特にこの作品に関しては、
たとえばボーナストラックが
多少増えていたりしたとしても、
絶対に最初の構成の方が格段にいい。
だからもし、VDP‐1509なる商品番号を
あるいは中古屋さんか何かで万が一見つけたら、
これは間違いなく買いである。


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