国連創設70周年を来年に控え、世界の平和と安全に主要な役割を果たす国連安全保障理事会の改革に向けた安倍外交に弾みがついてきた。第2次安倍晋三内閣は「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げ、首相はわずか1年9カ月で5大陸49カ国を訪れた。突出した「外遊熱」(6日付東京)などと揶揄(やゆ)する報道もあるが、日本最大の中国情報サイト「Record China」は8日、中国新聞網の報道を紹介し、中国は「明らかに経済と安保という2枚のカードを行使する旅」とその意義を見通している。
首脳レベルでの安保理改革の支持集めも外遊の目的。大票田のアフリカや南米をはじめ、カギを握る国々への根回しには余念がない。バングラデシュは6日、首相来訪を受けアジア・太平洋枠からの安保理非常任理事国選挙への出馬を取りやめた。これで日本当確の公算は前進。これに先立つモディ印首相との会談でも安保理改革の「具体的な成果」への連携を打ち出した。
第1次安倍内閣は発足して間もない2006年10月、北朝鮮核実験に直面した。最初の外遊で北京とソウルを訪問している最中だった。国際規範に挑戦する北朝鮮に安倍首相は断固たる姿勢で臨んだ。折しも日本は安保理非常任理事国で、しかも議長月。首相の直接の指示を受け、米欧と緊密に連携する一方、中露を説得し、対北制裁条項を含む初の安保理決議の採択が実現した。当時国連代表部で政務を担当していた筆者にとっても、日本が安保理に常時議席を持つことが、日本の国益のみならず、世界の平和と安定に寄与する上でいかに有効かを実感した原体験となった。