米大統領、対イスラム国で戦略転換 9・11前に“対処療法”から大規模軍事介入へ | 毎日のニュース

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 【ワシントン=青木伸行】オバマ米大統領が10日、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」の壊滅を目標に、シリア国内の拠点を空爆する方針を明確にしたことは、「世界の警察官」としての役割を避けてきた大統領にとり、戦略転換だといえる。

 オバマ政権は、イラク北部アルビルなどにおける限定的な空爆により、イスラム国の勢力を部分的に削(そ)ぐという、いわば「対症療法」を基本としてきた。これに対し、空爆をシリアに拡大し、米国が「有志連合」を率いる形での包括的戦略は、イスラム国全体を壊滅させる「根治治療」への転換であり、軍事介入が大規模な掃討作戦へと変容することを意味する。

 8月8日に始まったイラクでの空爆は150回以上にのぼり、イスラム国の勢力を局地的に後退させる成果を上げている。だが、こうした「対症療法」では、イスラム国が再び態勢を立て直すことは目に見えている。このためオバマ大統領も、イラクとシリアを股に掛け猛威を振うイスラム国に対し、全面的な対テロ戦で臨む決断を下した。

 住民を虐殺し外国人を拘束するイスラム国が、「国際社会の脅威」であるという自明の理が、オバマ政権を「根治治療」へと突き動かしもした。当然の帰結だといえるだろう。

 2001年の米中枢同時テロから11日で13年。「同時テロ以降、テロの脅威は最も深刻な状況にある」(フランスのオランド大統領)という情勢下にあって、真に問われているのは国際社会の対応である。