【神品至宝 台北・故宮展から(8)】「雨後の空」に重ねた憧れ「青磁槌形瓶」 | 毎日のニュース

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 陶磁器生産が成熟した北宋時代、当時の首都開封から200キロ離れた汝州(じょしゅう)の地で、宮廷に納めるための青磁が焼造されました。それが汝窯(じょよう)青磁です。

 雨後の空にたとえられる、青の一語では表せない淡い白さ、しっとりした釉調(ゆうちょう)こそ汝窯青磁の特質。青磁の理想と後世に伝えられました。この特別な色を出すのはとても難しかったのでしょう。伝世数は世界にわずか70点ほど。うち21点を台北の故宮博物院が所蔵しており、いま本展のために4点が来日しています。

 この槌形瓶は当初、皿のような口-盤口でしたが今は失われており、削って整えられたようです。細く伸びた首に緩やかにふくらんだ胴。底には乾隆帝の詩が刻まれています。北宋末期の文人皇帝、徽宗(きそう)への思いが表されています。乾隆帝は憧れの徽宗と汝窯青磁を結びつけていたのでしょう。

 汝窯については近年、窯址(ようし)が発掘調査されるなど研究が進んでいますが、わからないことも多い。本展に合わせて東京国立博物館東洋館でも、国内所蔵の汝窯を含む貴重な青磁を特集展示中。ぜひごらんください。(三笠景子・東京国立博物館研究員)