多くの挿話「大切な言葉を託された気がした」
日本の出版文化を支えている工場が東日本大震災の被災地にある。宮城県石巻市の日本製紙(にっぽんせいし)石巻工場。日本製紙は国内出版用紙の約4割を担っているという。津波にのまれ、閉鎖も危ぶまれたこの主力工場に1年にわたって通い、復興までの足跡をノンフィクション「紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている」(早川書房)にまとめた。
「(多くの本の紙が)ここで造られているなんて、伝える側が知らなかった。未来に向けて書き残しておかなければと思った」
前作「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」が平成24年、第10回開高健ノンフィクション賞に。本書は受賞後第1作となる。
工場には、8号抄紙(しょうし)機(8(ハチ)マシン)と呼ばれる全長111メートルの巨大な紙の製造機がある。小説「永遠の0(ゼロ)」、漫画「ONE PIECE」…。多くのヒット作の紙が8マシン製だ。もちろん本書も。コピー用紙も製造され、工場の年間生産量は約84万トンにも及ぶ。