【NEWS EYE】「ヤジド派クルド人」 独特の信仰体系…イスラムなどは異端視 | 毎日のニュース

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 シンジャールの山岳地帯は、聖書にあらわれる「ノアの方舟」が最後に行き着いた場所-。イラク北部を中心に居住するクルド人の少数派ヤジド派には、こんな伝承が残る。彼らが今月、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」の攻撃を受けシンジャール山中に逃げ込んだのは、その信仰に救いを求めた側面があったためともいわれる。

 ヤジド派の信仰体系は12世紀の指導者シャイフ・アディーによって確立された。古代ペルシャで生まれたゾロアスター教やイスラム教シーア派、キリスト教、マニ教などが混じり合った教義や呪術的な儀礼を実践。日常的にはクルド語方言を話すが、宗教儀礼にはアラビア語が用いられるという。正確な数は不明だが、現在の人口は70万人程度と推測される。

 ヤジド派は、20世紀前半まで一帯を支配したオスマン帝国でイラク北部での一定の自治を認められてきた。その一方で、クジャクを天使の象徴として神聖視したり、シャイフ・アディーの墓を信仰対象としたりすることから、多数派のイスラム教やキリスト教からは「悪魔崇拝者」とみなされ迫害の対象にもなった。

 イスラム国による攻勢以前も、2007年に国際テロ組織アルカーイダの攻撃で400人以上が犠牲となるなど、しばしばテロの標的になっている。にもかかわらず中央政府やクルド自治政府の支援が行き届かなかったのは、ヤジド派への伝統的な「異端視」も背景にあるためだと指摘される。(カイロ 大内清)