■見事に姿捉えた「スケッチ」
無慈悲な夏の暑さをつかの間忘れさせてくれるのは、やはり水。冷房や扇風機などの文明の利器はひとまずおくとして、私たちが手軽に涼を感じることができるのは、何と言っても水という存在だろう。せせらぎの音、絶え間ない流れ、緑や空がたゆたう水面…。
この曲は、20代半ばの作曲者が、滞ることなく形を変えていく水の融通無碍(むげ)な姿を、類い希(まれ)な感覚と新鮮な響きで見事に捉えた“小スケッチ”だ。5分ほどのピアノ曲ながら、演奏家のセンスの程が測られてしまうラベル初期の名作。
フランス印象派の先輩、ドビュッシーのピアノ曲「水の反映」(「映像」第1集)と聴き比べてみるのも、また一興。
ジャン=イブ・ティボーデの演奏で(製品番号 COCO-70933)。
(モーストリー・クラシック 編集部 寺田俊也)
コロムビア、1080円