【巨編に挑む】堕落した権力に「笑い」で闘うガルガンチュアとパンタグリュエル | 毎日のニュース

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 誰にも、死ぬまでには読みたい(読まなくては)と思いながら、その長大さ、難解さゆえ、尻込みして放置したままの巨編があるのではないか。本シリーズは、重い腰を上げて気にかかっていた巨編に挑んだ記者の読書ノートである。幕開けはフランソワ・ラブレーの『ガルガンチュアとパンタグリュエル』。(桑原聡)

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 糞尿譚(ふんにょうたん)と性にまつわるおおらかな描写にあふれた物語という風聞を耳した高校生は、図書館で渡辺一夫訳『第一之書』(この物語は『第五之書』まである)を開いてみた。

 《読者に この書を繙(ひもと)き給(たま)う友なる読者よ。悉皆(しっかい)の偏見をば捨て去り給えかし。(略)涙より笑いごとを描くにしかざらむ、笑うはこれ人間の本性なればなりけり。楽しく生き給え》

 閉塞(へいそく)感にあえいでいた高校生は、最後のひと言《楽しく生き給え》に感電するものの、あとがいけない。登場する固有名詞の大半は未知のものばかり。これをいちいち註(ちゅう)で確認するため、物語本来の面白さがほとんど味わえないのだ。結局、『第一之書』を読み終えることなく撤退する。