「日本海側の人たちは津波に対して意識が低い」。新潟県佐渡市の元高校教諭、小菅徹也さん(77)=写真=は、危機感を持って佐渡島に襲来した津波の歴史を調べてきた。日本海側でも津波があり、津波は恐ろしいということを過去の事実とともに伝えていけば、人々も変わっていくと考えるからだ。「新潟地震は津波による人的被害こそ小さかったが、遡(さかのぼ)れば多くの人が亡くなっている。意識を高く持てば被害は全然違ってくる」
きっかけは東日本大震災だった。仙台市に住む長女家族が被災した。これを契機に、佐渡に過去、どんな津波が来ていたかも分かっていない自分に気がついた。以降、高校で日本史を教えていた経験を生かし、過去の地震の記録が記された古文書を読みふけった。
海岸から約1・2キロ離れた地域の住民から、大昔に3隻の船が津波で流されてきたという伝承も聞いた。「佐渡には津波の言い伝えがたくさんあることを知った」という。
日本海側の津波に詳しい平川一臣(かずおみ)北海道大学名誉教授(自然地理学)に調査を依頼。平成24年には一緒に佐渡島沿岸部を回り、津波によって運ばれた石や砂が堆積した地層の堆積物から、過去数千年間で5つの巨大な地震と津波が襲来したことを確認した。