【いいたて通信(34)】「風化を止めるため」後生に語り継ぐ 避難の飯舘村が絵本に | 毎日のニュース

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 「月日が経てば風化していくのは仕方ないかもしれませんが、誰かが風化を止めるために語り継いでいく必要があると思ったんです」

 震災後の福島県飯舘村の様子や避難してからの苦労や奮闘をまとめた絵本「がんばっぺ までいな村」が今年3月11日に出版された。絵本を作ったのは、飯舘村の菅野典雄村長の妻で、元小学校校長の菅野允子さん(68)だ。

 允子さんは、飯舘村の人の苦労や奮闘を記録に残しておくことや多くの人からの支援を受けたお礼に村について描いた絵本を作りたいと考え、新潟県の絵本作家、横山一枝さんなどと協力して絵本作りを進めてきた。

 「放射能については難しい話ばかりが飛び交っている。子供や大人、高齢者など幅広い人に読んでもらいたかった」と話す。

 初めての絵本作りとあって苦労も多かったというが、菅野村長の励ましもあり、約1年がかりで出版した。

 絵本の中の絵は柔らかいタッチで飯舘村の四季折々の絵が描かれている。絵本作家のかとーゆーこさんが描いた絵だ。

 海外の人にも読んでもらいたいと、米国で暮らす横山さんの娘が訳した英文も添えている。そのかいあって、デンマークやオーストラリアなどからも注文や励ましのメールなどが送られてきた。

 絵本は3月11日に出版してから、売れ行きも好調で全国から問い合わせが相次ぎ、初版本はすべて完売した。允子さんによると、結婚式の引き出物に贈りたいという注文やぶどう園の10周年記念に100冊の注文などがあったという。

 允子さんは「原発事故の飯舘村ということだけではなく、美しい風景や飯舘村民の頑張りを知ってもらいたかった」と話す。

 「ふるさとは 母のにほひや 凍み大根」

 絵本の帯には飯舘村のまでい大使の俳人の黛まどかさんが書いた俳句が添えられており、「帯も含めて本の最初から最後まで想いを込めた」という。

 絵本の最後には「がんばっぺ までいな村」と書かれている。