【鑑賞眼】マームとジプシー 「リフレイン」が醸し出す叙情性 | 毎日のニュース

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 現在、最も注目される若手劇団だ。本作は、平成23年初演の岸田戯曲賞受賞作と、24年の「ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。」を再構成したもの。作・演出の藤田貴大は、同じシーンを執拗(しつよう)に反復する「リフレイン」の手法で、ある家にまつわる記憶を感慨深く浮かび上がらせる。

 母親は早世し、長女りり(成田亜佑美)と二女すいれん(荻原綾)はとうに独立。父親の死後、長男かえで(尾野島慎太朗)が1人で守っていた実家は、区画整理のため取り壊されることになった。りりとすいれんの娘たちも交え、一家が久々に実家に集まった日から場面は始まる。

 だが、何かドラマが起きるわけでもなく、各シーンは日常の断片であり、しばしば過去へと飛ぶ。父の一周忌の集い、父が亡くなった日、長女が自立して家を出ていった日…。

 解体される家には、3きょうだいや従姉妹(いとこ)たちの、ささやかながらかけがえのない思い出が染み付いている。その断片的な情景は、リフレインされる度に高揚感を増してゆく。とりわけ、終盤の長女の叫びが切ない。