文芸誌「新潮」が創刊110周年 | 毎日のニュース

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 文芸誌『新潮』(新潮社)が今月上旬に発売された6月号で創刊110周年を迎えた。

 同誌は日露戦争期の明治37(1904)年5月5日に創刊。関東大震災直後と第二次大戦終戦期の臨時休刊を除いて発行を続け、芥川龍之介「藪の中」や三島由紀夫「金閣寺」をはじめ日本文学史に残る名作を世に送り出してきた。西村賢太さんの「苦役列車」や小山田浩子さんの「穴」など最近も多くの芥川賞受賞作を生んでいる。

 記念特大号と銘打った6月号は約550ページ。60人超の作家らによる創作特集を組み、宮本輝さんやドナルド・キーンさんらによる新連載を掲載するほか、大江健三郎さんと古井由吉さんによる特別対談なども収める。芥川賞作家の円城塔さんや平野啓一郎さんら若手・中堅作家も「小説家の転機」というテーマでエッセーを寄せた。

 節目の号だが、創刊後の歴史を振り返るだけでなく、現在と未来を見据えた編集になっている。矢野優編集長は「文学作品は時代精神を感じ取って紡ぎ出される。フェイスブックやツイッターなどの普及で人間と情報のかかわり方が激しく変化する中、現代の文芸の力を感じ取ってもらえるような未来志向の内容を示したかった」と話している。(海老沢類)