「周囲から“最近たくましくなったね”とよく言われるのですが、自分でもそう自覚できるようになりました」。作家デビューから2年。3作目の長編『Burn.-バーン-』(角川書店)を上梓した加藤シゲアキさんはこう語ると表情を引き締めた。
ジャニーズの人気グループ「NEWS」のメンバー。作家デビュー時、「アイドルが小説家に」と話題を集めただけに、「正直、2作目まではプレッシャーや不安を抱えながら書いていましたが、3作目では、どんな評価を受けても“へこまない”だけの強さを持ったつもりです」と苦笑した。
《劇作家の夏川レイジは演劇界最高峰の賞を受賞し人気、実力ともに絶頂期にあった。が、彼にはかつて天才子役と呼ばれ、突然引退した過去があった…》
「1作目は友情、2作目は恋愛、3作目は家族。同じテーマは書きたくない。前作よりもスケールアップさせたい」と語る一方、全作品の根底に秘めたメッセージは、華やかなステージに立つ者の苦悩、葛藤だ。
ライブツアーや作詞作曲を担当したアルバム制作をこなしながらの執筆活動。「締め切りが過ぎ、追い込みの時期はベッドに入らず、座ったまま寝ていました」と明かす。
1月5日に脱稿。「来年はさすがにこんな正月は嫌ですね」と語った後、「でも僕はずっと書き続けていく覚悟です。たとえ発表の予定がなくても…」。
前2作はベストセラー。だが、それに甘んじることなく「今作もデビュー作の思いで書きました」。パソコンには“自分に厳しく”と書いた付箋(ふせん)を貼り付け、己を鼓舞していたという。(戸津井康之)