大阪府和泉市 木村吉男 73 無職
過日、タンポポの綿毛を見掛け、8年前の出来事が目に浮かんできた。
その日の夕方、4歳の孫娘が保育園から帰ってきて、庭にタンポポの綿毛を見つけた。近づいて、プーッと息を吹きかけた。そのはずみか、プーッとおならも出てしまった。
後ろで見ていた私は、思わず吹き出してしまった。孫は、綿毛が勢いよく飛び散ったことの方がうれしかったのか、手をたたいて喜んだ。私の方を振り向くと、照れ笑いの顔が戻ってきた。
その彼女も、お下げがよく似合う年頃になり、今春、念願の中学校に入学した。早朝より、新しい制服に身を包み、スクールバスで元気に通っている。
多分、8年も前の、しかも幼い頃のことなので覚えていないであろう。だから、何もぶり返して話すことはなかろう。
きのうもきょうもタンポポの綿毛を見掛けた。爺はひそかに懐かしんでいる。
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