先の大戦でアメリカが行った一般市民の大殺戮は広島・長崎への原子爆弾の投下だけではありません。
昭和20(1945)年3月10日の東京大空襲では、わずか2時間あまりの短い時間で約10万人の人たちが焼夷弾を使った米軍の無差別爆撃によって虫けらのように殺されました。
当時、警視庁のカメラマンだった石川光陽さんが撮影したショッキングな現場写真が残っています。焼夷弾の高熱で黒こげになったマネキン人形のような焼死体の山、また山…。乳飲み子を背負ったまま焼き殺された若いお母さん。高熱から逃れるように川や運河に飛び込み、溺死したり、CO中毒死した人たちも数えきれません。
東京大空襲は、非戦闘員の一般住民をターゲットにした例を見ない「非道の無差別攻撃」でした。
『アキとカズ』では名前を変えましたが、この悪魔のような無差別攻撃を考案した米空軍の司令官の男がいます。同じく焼夷弾を使ったドイツ・ハンブルク空襲の指揮官として悪名高かった男です。
日本政府はこの男に戦後「航空自衛隊育成に貢献した」などとして勲章を贈っているのですから、あきれてモノがいえません。
退役した男を日本のTVクルーがアメリカの自宅に訪ねるドキュメンタリー番組があります(DVD有り)。東京大空襲について質問する記者に対して男は傲岸不遜に「戦争のことは話したくない」と言い放つ。そのくせ「これなら撮っていいぞ」と棚に飾ってある日本政府の勲章を指さすのです。
安倍晋三首相の靖国参拝に米政府がケチをつけたのは「日本封じ込め」にほかなりません。先の大戦で「日本は極悪非道のことをした」という戦後秩序を変えたくないのです。
そんなことを言い続けるのならば「アメリカがやったこと」こそ、世界に知らしめるべきではありませんか?
(「アキとカズ」作者、喜多由浩)