【書評】『「死」の百科事典』デボラ・ノイス著、荒俣宏監修、千葉茂樹訳 | 毎日のニュース

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 「死ぬのって、きっとすごい冒険なんだろうな」と言ったのは、永遠の少年ピーター・パン。そのセリフと死神の絵で幕が開ける本書は、死に関する古今東西のテーマを集めた異色の「百科事典」だ。

 項目の選び方が面白い。Aの欄だけでも、「暗殺(assassination)」の次に「無神論(atheism)」がきたり、「護符(amulet)」があると思えば、「検死解剖(autopsy)」が出てくる。死や魂の象徴である「鳥」の項目では、エジプトやアステカの伝承が紹介された後、ハゲワシの減少によりインドの風葬の習慣が廃れつつあること、ハゲワシの減少は解熱剤を飲んだ死体が原因であることまでもが記される。

 エジプトの「死者の書」、未婚のまま死んだ若者のために行うルーマニアの「死の結婚式」、古代メソポタミアの時代から綿々と続く不老不死への渇望、ハロウィーンからユダヤのシバに至るまでのさまざまな儀式。死に関連するテーマのいかに多いことか。

 さらにアメリカで起こった殺人事件の動機の26・1%が三角関係など恋愛の口論がきっかけであることや、詩人のロセッティが妻とともに埋葬した詩を取り戻したくなって、墓を掘りかえしたこと、遺体コレクション市場では、頭がい骨、目、指、脳、血が人気で、「大統領、映画スター、ナチス党員、犯罪者」のものが高価であることなど、死にまつわるトリビアも、ついつい読みふけってしまう。