【書評倶楽部】『買い物の日本史』本郷恵子著 興福寺貫首・多川俊映 | 毎日のニュース

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 ■物の大切さがズシリときた

 近年、心を病む人が多い。ここ10年、年間の自殺者が3万人前後を数える。人命は地球より重いといわれる一方で、自他のいのちがいかにも軽く扱われている現実がある。総じて、いのちのリアリティーがない。というか、生きている実感が希薄なのだ。

 幸不幸はともかく、日常なにかにつけ便利なのも、生きている実感を喪失する原因の一つだろう。

 ネットで買い物し、カードで支払って、欲しいものが手に入れば、それは手間が省けて便利にはちがいない。サラリーも銀行振り込みだから、ものの見事にキャッシュレス。小銭ジャラジャラの煩わしさもない。

 --と思っていたら、中世では、「お金は大量にあるとあきらかにじゃまで、始末にこまるものであった」というではないか。

 「銭は一〇文で一疋、一〇〇疋で一貫」「一貫は銭一〇〇〇枚」(一貫は現代の10万~20万円)。「銅銭一枚がだいたい三・五グラムほどで、…一貫は約三・五キログラム」にもなったという。