【話題の本】男女の愛、抜きんでた心理描写 『とらわれて夏』ジョイス・メイナード著、山本やよい訳 | 毎日のニュース

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 アメリカの女流小説家でノンフィクション作家でコラムニストで、日本では自身が18歳のときに35歳年上だった作家J・D・サリンジャーと暮らした日々の思い出を書いた『ライ麦畑の迷路を抜けて』(平成12年に東京創元社から刊行、野口百合子訳)で名が知られた著者の、通算6作目にあたる長編小説だ。ほかに『19歳にとって人生とは』(ハヤカワ文庫、桝田啓介訳)、『誘惑』(講談社文庫、吉野壮児訳)などがある。

 ジェイソン・ライトマン監督&脚本による同名の映画が公開中(原題は《Labor Day》)。『愛を読むひと』のケイト・ウィンスレットと『ノーカントリー』のジョシュ・ブローリンが主演を張っている。

 アメリカ東部の小さな町を舞台に、結婚生活の破綻で心に傷を負った美貌の母親アデル、思春期を迎えた内気な息子ヘンリー、2人が暮らす家に身を隠すために転がり込んできた心優しき逃亡犯フランクが過ごした6日間の物語は、映画の評判も上々のようだが、映画では少し物足りなかった部分を原作は完璧に描いている。男女の愛の心理描写にかけては抜きんでた著者の面目躍如の一冊といっていいだろう。(イースト・プレス・ 本体1900円+税)

 宝田茂樹