取材依頼の電話が立て続けにあった。なぜかテーマが同じで老親介護だ。
今や60代はまだまだ介護世代らしいが、私の場合、母が倒れたのが30年近くも前のこと。で、父が92歳で亡くなってからは既に7年もたつ。
長い長い介護期間だったけれど、そのときの現実感はすっかり薄れてしまっている。「どうでした?」と聞かれても、「どうだったかなぁ…」みたいな感じだ。
むしろ、「介護する側」より「介護される側」の自分の未来を想像する方がずっとリアルな気分だ。
例えば、どの時期に老人ホームに入ろうかなぁ、とか、既に考えている。
私の場合、あまり早く入居するとお金が続かない。ぎりぎりまで1人暮らしで頑張るしかない。それで、「要介護4」ぐらいで、お気に入りの安いホームに入居するつもり。以後は、日々、ベッドで思い出に浸って楽しく生き、5年以内にはこの世を去ろうかなぁ、と思って、せっせとお金の計算をしたりしている。
その予定のおかげで、これからこそが自立自助で頑張って働いていくとき、と張り切っているのだけれど、取材の電話で聞かれるのはそういうことではない。
「老親を老人ホームに入れることをどう思いますか?」とか、「どうやって親を老人ホームに入れたのですか?」とか。
「はあ?」という感じだ。
「入れるって、なに?」となぜかカチンときてしまう。
おかげで、いちいち「入れるじゃないでしょっ、親は子供じゃないし、物じゃないし、せめて、入居していただくとか言うべきじゃないですか!」と文句を言うので、相手に辟易(へきえき)とされてしまったようだった。