【ゆうゆうLife】読者から 母の旅立ち | 毎日のニュース

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 大阪府岸和田市 縣直樹(61) 

 「呼吸がつらい」。そう訴えて母が入院した。飲み込みづらくなると食事に執着を無くし、点滴に頼った。胸が苦しい、体がだるい、腰が痛む、眠れない。繰り返される苦痛に医療の限界も知った。

 長引く入院生活に希望を見いだせず、見舞う側も気が重い。母が熟睡していると、がっかりする一方で、「このまま眠り続けていてほしい」との思いが生じる。たまには母から解放されたい! 偽らざる心境だった。帰ろうとすると、母が「もっとおって」と引き留める。「気の弱いこと言わんでよ。若い頃から気丈やったやん」。仕事をやりくりして駆けつける私には余裕がなかった。

 衰弱する母を思って、胃瘻(いろう)を申し出ると、事前の絶食を言い渡された。すると、食べることに無関心になっていた母が「おなか空(す)いた」「なんか食べさして」と哀願した。「ごめんね。今、あかんのやてぇ」。身を切られる思いで答えた。胃瘻の治療を待たず母は旅立った。89歳だった。あれほど欲しがったのだ、思う存分、食べてもらえばよかった。後悔の念、いまだ限りなく深い。

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