「霊長類最強女子」に仕込んだ神速タックル 後退許さない厳格な父、吉田栄勝さん死去 | 毎日のニュース

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 レスリング女子53キロ級の吉田沙保里(ALSOK)の父、栄勝さんが亡くなった。国別対抗戦、ワールドカップ(W杯=15、16日・東京)日本代表の直前合宿が始まった11日、東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)に吉田の姿はなく、栄和人監督や選手らは沈痛な表情で、黙祷(もくとう)をささげた。

 「口より先に手」という昔かたぎの父親は、厳格な指導者でもあった。吉田栄勝さんが津市の自宅に、20畳足らずの手狭なレスリング道場を構えたのは、28年ほど前。当時3歳の長女、沙保里に行った手ほどきは過酷の極みといえた。

 「ここ(道場)で教えたのは基本だけ」

 吉田の生い立ちを聞かれる度に栄勝さんは笑っていたが、3歩下がれば他の道場生に足を踏まれ、5歩下がれば父の竹刀が背中を打った。的をめがけて一直線に飛び込む神速のタックルは、後退を許さない父と教えを守った娘との労作だ。