テレビを見ながら思わず「オーッ!」と声を上げてしまった。先週開幕した女子プロゴルフ『ダイキンオーキッド』最終日、昨季の賞金女王・森田理香子の“直(じか)ドラ”に魅せられた。
ティーグラウンド以外でドライバーを使用することを直ドラと呼ぶ。首位に2打差で迎えた最終18番(パー5)の第2打、残り246ヤードで1Wを手にした。打球は逆風にやや影響され、惜しくもグリーン手前10ヤードに落ちて成就ならなかったが、果敢な攻めは称賛ものである。2012年、16年ぶりに年間11個のイーグル記録を更新したパワーは、さらにアップしていた。
直ドラは技術とパワーがいる。男子では、池田勇太が昨年優勝したマイナビABC選手権の勝負どころで使うなど時々目にするが、女子ではほとんど記憶にない。ティーアップできるならいざ知らず、直ドラはリスクが伴う。ロフトが立っている分、ダフったり、トップしたりするなどミスが出やすいため、非力な選手では対応できない。
女子では270ヤード前後のドライバーの飛距離を誇る森田をはじめパワーある者に限られた、いわば「秘技」といえるだろう。
何よりスポーツの魅力は、結果を簡単に予測できないという点である。逆に、演技者からすれば予測できないシーンを表現することで真のプロフェッショナルとして伝説にさえなりうる。
「マスターズ伝説」というのがある。J・ニクラウスが全盛期が過ぎた1986年最終日の15、16、17番でイーグル、バーディー、バーディーで締めて逆転優勝したシーン。T・ウッズがプロ初出場初優勝した97年、最年少の21歳、2位と12打差の18アンダーはいずれも大会記録として人々の記憶に深く刻まれている。