【種をまく 被災地で育つ地域医療】(上)東北大学病院、99年支えた誇り | 毎日のニュース

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医師派遣の仕組み、どうつくる

 先月19日、東北大学のキャンパスから、医師の卵たちを乗せた貸し切りバスが宮城県南三陸町の公立南三陸診療所に向かった。東北大学医学部が今年度から1年生に必修化した「被災地体験実習」だ。同行の指導教官は車中でこう訴えた。

 「東北大学医学部は過去99年、地域医療の要として地域の病院に医師を供給してきた。皆さんの年代で医者は大幅に増えるが、東北大学医学部の歴史と伝統を引き継ぐメンバーに入ったことを自覚してもらいたい」

◆三方一両損 

 医師不足を受け、政府は全国で医学部定員を拡大した。だが、医師を増やしても医師不足は解決しない。問題は都市部に集中する「偏在」だからだ。

 被災地体験の必修化に尽力したのは、同大学病院の石井正教授。被災地で医師が不足しないシステムをつくろうと、同大学病院が昨年、発足させた「地域医療復興センター・総合地域医療教育支援部」に招かれた。石井教授は3年前、石巻赤十字病院の勤務医だったとき、東日本大震災に遭遇。全国の救護チームのコントロールタワーになった。「震災後の県と大学病院と地域医療をつなぐ顔」(大学関係者)だ。