【きょうの人】津波被害受けないまちづくり目指す建築家 迫慶一郎さん(43) | 毎日のニュース

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 ■「希望をつくる仕事だと信じています」

 東北沿岸部に津波の被害を受けないまちを再建することはできるのか。「高台がないなら、つくればいい」。建築家として出した“解”が、高さ約20メートルの人工地盤の上に居住空間をつくり出す「東北スカイビレッジ構想」だ。

 海との共生に向けた大胆なアイデアは宮城県名取市の佐々木一十郎(いそお)市長の目に留まり、アカガイ漁で知られる閖上(ゆりあげ)地区の復興計画案の一つに採用された。人工地盤は東京ドームほどの大きさで、半分海に突き出し、内部には屋内型の漁港や水産加工場も備える。上部にはオフィスやマンションの建設を想定している。

 数百億円を要する巨額プロジェクトだが、一歩ずつ外堀は埋めている。佐々木市長と一緒に中央官庁も回った。「最初に水産庁の担当者に相談したときは、のけぞられました。屋内型の漁港なんて前例のない計画だから。その後は、逆に向こうからアイデアをいただくほど好感触です」

 だが、同市の復興事業は、沿岸部で復興を進めようとする市側と、内陸への集団移転を求める一部住民の対立が長期化し、計画は二転三転。スカイビレッジ構想の事業化も不透明だ。

 北京に拠点を構え、経済成長が著しい中国で数々の開発プロジェクトに参画した。2008年の四川大地震による校舎崩壊を受け、耐震型の学校を現地に寄贈する計画を進めていたところに東日本大震災が起き、母国のためにできることを考えた。

 「一戸建ては何十年もの間、家族の物語の舞台になる。責任は大きいが、建築とは希望をつくる仕事だと信じています」(西見由章)