取り調べの録画映像をNHKに提供した弁護士を大阪地検が懲戒請求した問題で、大阪弁護士会は1月、弁護士を懲戒しないとしながら映像提供を刑事訴訟法の規定に違反する行為と認定した。これを受けて元検事ら専門家から法改正を求める声が上がっている。刑訴法は刑事司法手続き以外での証拠使用を禁じているが、専門家は「証拠を公開して世に問う道がないのは厳格すぎる。法改正し、柔軟な運用を目指すべきだ」と提言する。
懲戒請求されたのは大阪弁護士会所属の佐田元(さだもと)真己弁護士。傷害致死罪に問われ、大阪地裁から無罪を言い渡された男性の弁護人を務めた。問題の映像は、佐田元弁護士が密室での取り調べの実態を周知する目的で、NHKの依頼に応じ映像DVDを提供。NHKは男性の了解を得た上で映像を一部加工し、昨年4月に関西地区の報道番組で、同9月には全国ネットで放映した。
平成16年に改正された刑訴法では、検察側が開示した証拠品の複製を弁護人らが裁判や再審請求などの目的以外に使うことを禁止。報道関係者への譲渡も違反にあたることから、大阪地検は昨年5月、同弁護士会に佐田元弁護士の懲戒を請求した。ただ、この規定をめぐっては、成立前から日本弁護士連合会などが批判。「違反した場合の措置は使用の目的や態様、関係者の名誉が害されたかといった事情を考慮する」との“ただし書き”が盛り込まれた経緯がある。