スイスで開かれた今年の若手ダンサーの登竜門、ローザンヌ国際バレエコンクールで、日本人が入賞者6人のうち3人を占めた。今コンクールについて、舞踊評論家の岡見さえさんが振り返った。
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第42回ローザンヌ国際バレエコンクールの結果は、日本のバレエ教育の水準や国際競争力の高さの証明であるのに間違いはない。写真や映像で1位の二山(にやま)治雄さん(17)、2位の前田紗江さん(15)、6位の加藤三希央さん(18)のダンスを見て、その美しさに感嘆した人も多いだろう。だがこの快挙は、五輪の金メダルとは性質が異なる。それは表現者のゴールではなくスタートなのだ。
このコンクールの審査では、事務局によれば技術力も考慮するが「プロのダンサーになる潜在力」が優先される。つまり技術のみを競う場ではない。この「潜在力」を見極めるため、決勝前の5日間も審査の対象である。今年は295人が応募し、69人が事前選考を通過、現地で1月26日から決勝の古典演目とコンテンポラリー演目の稽古や指導を有名なダンスのプロに受けた。「才能、体型、果敢に挑戦し自己を表現する素質、想像力と感性豊かに音楽に反応する素質、異なる原理の動きを明確に理解し踊る能力、技術の自然さと制御と連係」を基準とする継続的審査を経て、20人(うち日本人6人)が決勝に進んだ。審査の公平を期し、審査員、コーチ、コンテンポラリー演目の振付家らはボランティア参加で、参加者と「一人の人間として」向き合う。