産学の不透明な関係に捜査のメスが入る。
大手製薬会社ノバルティスファーマの高血圧治療薬ディオバンをめぐり臨床研究データが改竄(かいざん)されていた問題で、厚生労働省がノ社などを薬事法違反の罪で東京地検に刑事告発した。
医療倫理にもとり患者と社会の信頼に背く事案である。強制力を持つ刑事捜査により真相を徹底解明し、再発防止に結び付けてもらいたい。
データは、東京慈恵医大など複数の大学の臨床研究でノ社の治療薬有利に操作され、ノ社は、それに基づき医学雑誌に掲載された論文を多くの広告に使って、年間1千億円余を売り上げていた。
データ改竄はノ社が大学側に計11億円超の奨学寄付金を支払っていたことへの見返りでは、と疑われても不思議ではない状況だ。
有識者による厚労省の検討委員会の中間報告では、奨学寄付金はノ社が社長か営業本部長の決裁で出し、社員(当時)も身分を隠して臨床研究に参加していたことから、「会社として関与したと判断すべきだ」と指摘している。