9月14日午後2時、日本の宇宙科学技術の未来を担う新型ロケット「イプシロン」が、鹿児島県肝付町の宇宙航空研究開発機構(JAXA)内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられた。国産の新型ロケットは2001年の主力機「H2A」以来12年ぶりだ。小型衛星を低コストで打ち上げることが可能になり、商業衛星打ち上げ市場への参入が近付いた。
「はらはらしながら見ていた。本当にほっとした」。製造にかかわったIHIの幹部は苦笑する。8月27日には発射19秒前にトラブルで打ち上げが中止されていただけに、関係者の喜びはひとしおだった。テレビや雑誌でも多く取り上げられ、「ロケットを何十年もやってきて一番注目された」という。
これまで人工衛星を搭載できる「日の丸ロケット」は、大型の「H2A」と「H2B」しかなかった。全長約24メートルで小型のイプシロンがそろうことで、効率的な宇宙輸送が可能になる。
イプシロンは既存技術の転用やITの活用でコスト低減が随所に図られた。衛星打ち上げ市場では、欧州メーカーなどが先行。日本は技術力には定評があるが、コスト競争力で劣っており、後塵(こうじん)を拝してきた。
イプシロンの打ち上げ成功は今後、日本の宇宙産業が世界市場で存在感を高めていくうえで、大きな一歩といえる。